
中学受験専門 国語 プロ家庭教師 細川
■難関中学 受験対策
■国語読解・記述指導
■東京23区・千葉県北西部
■中学受験を専門に、国語のプロ家庭教師として活動しています。
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■『受験国語 選択肢の判別 111の視点(無料)』(2025年4月23日改訂版)
■記事
・正味64ページ(両面17枚)
・本編約103,000字
■PDFデータ量
・7.51MB
■プリンター設定
・B4用紙
・印刷の向き(横)
・両面印刷
・短辺とじ
・枚数:全17枚(表紙1枚含む)
※両面で上下反対に印刷されないよう、数ページ分でテスト印刷をしてください。
■製本
・両面印刷後、用紙をしっかりと二つ折りにし、ページ順に揃えて重ね、『回転式ホチキス』で「中(なか)とじ」します。
・ホチキスは、背(外側)からノド(内側)に向けて打ちます。また、天地からそれぞれ6~7cmの位置に一か所ずつ打つと冊子が安定します。
■本資料は一見難しい内容に思えるかもしれませんが、大人の助力により(事前に読み込みが必要)、手順を踏んで説明すれば、小学5、6年生にもしっかりと理解させることが可能です。
・内容的に中学生や高校生の学習にも利用できます。
選択肢の判別 111の視点
※2025年4月21日改訂
論理パズル

■「消えた1,000円のナゾ」・「天使と悪魔と人間」・「Aさんの帽子は何色か」・「偽金貨はどれだ?」など、11の問題と解説。
各種論理

■三段論法(演繹法)・帰納法・背理法・論理的飛躍・弁証法・類推・仮説形成・詭弁論理など、各種論理の解説。ど、11の問題と解説。
■国語の選択問題で用いられる各種技法について、20年来メモを取りためてきたものを中心に分類、整理しました。本ページに掲載(けいさい)された各手法を知ることで全ての問題が解決できるわけではありませんが、選択肢を論理的、多角的に分析、検討するうえでの一助としてください。尚(なお)、一つの選択肢に複数の手法が用いられている場合があります。
■主要な手法111種に関連手法12種を合わせると、合計123種となります。
■選択問題の作問においては、解答者の心理を巧みに誘導する暗示手法が用いられる場合もあるため、参考までに巻末に『心理操作術』を記載しました。
■本ページの内容は簡略版です。詳細は『選択肢の判別 111の視点(PDF/無料)』をご覧ください。
■本ページの内容をよりよくご理解いただくため、『各種論理』の①~⑦を事前にお読みいただくことをお勧めします。
■各種論理のページ
①三段論法(演繹法) ②暗黙の前提 ③前提のすり替え ④因果関係 ⑤矛盾 ⑥背理法 ⑦論理的飛躍
■受験生、特に小学生は、大人が当然備えているような様々な視点が未発達であり、検討力も不十分です。そのため、塾講師や家庭教師は、子どもたちの学力を育成すべく、また、新たな視点を付与すべく、試行錯誤(さくご)を重ね、様々な技術を工夫して指導をしています。
随分昔からある「定石(じょうせき)テクニック」の一つに、「本文を通読していては制限時間内に全問を解き切ることは困難だ。本文は通読せず、先に設問に目を通し、本文で問われている箇(か)所の前後内容によって解答を決めよ」といった手法がありますが、残念ながら現在でも、非常に多くの小学生(中学受験生)たちがこの非本質的な手法を「正攻法」として指導を受け続けています。
「そもそも学力の低い子どもが伸びるはずがない。まともに授業をするだけ無駄(むだ)」、「所詮(しょせん)、その場限りのやっつけ仕事」と考えて子どもたちに対する先生方が多数いらっしゃるのもまた、この業界での現実です。「国語は秋になって伸びなければ、もう伸びることはない。国語は捨てなさい」、「記述問題は捨てなさい」といった、指導者(教育者)の無責任極(きわ)まりない言説を信じ込まされ、素直にそれに従い、受験産業の食い物(犠牲(ぎせい))となっている多くの純粋(じゅんすい)な子どもたちのことを思うと、大変気の毒で残念に思います。
選択肢の判別においては、「『言い過ぎ』、『大げさ』、『極端』な印象を与える選択肢は選ぶな」、「『断定表現』や『限定表現』、『強調表現』のある選択肢は選ぶな」、「『全て・どれも・みな』」のような全称(ぜんしょう)表現が用いられた選択肢は選ぶな」、「選択肢の説明文の前半を棒線(ぼうせん)で消し、後半の内容のみで判断せよ」、「『強い』印象や『ポジティブ』な印象を与えるものを選べ」、「プラス、マイナスの印象の違いで決定せよ」、「説明が具体的すぎるものは選ぶな」、「いかにも立派な正論が主張されたものは選ぶな」、「教育上好ましい内容となっている説明を探せ」といった、思考や論理によらない、その時その場だけの「印象や感覚に依存(いそん)する手法」や「安直な機械的処理法」が指導されているケースが相当に見受けられます。これは、高校受験や大学受験の指導においてはより一般的であるようです。
論理や思考によるのではなく「印象や感覚による判定法」や「安直な機械的処理法」によって解答を決めるというのは、「鉛筆やサイコロを転がして答えを決める」のと違いはありません。作問者の側は、多くの子どもたちがそのような手法によって国語の選択問題に当たるよう指導されていることを承知のうえで、判断に揺(ゆ)らぎを与え、誤答に誘導しやすいよう、手を変え品を変え、様々に工夫を凝(こ)らして作問をしています。自分自身の将来のためにも、「読む力と考える力」を育て、「本文との速(すみ)やかな照合と検討」とによって「論理的、かつ正確な判断」ができるよう、普段から「本質的な読解学習」にしっかりと取り組んでおきましょう。
※本資料巻末に掲載した「時間配分のしかた」、「時間短縮訓練」、「高速トレース(全脳型分析的高速処理)」、「再現学習(口頭でのアウトプット)」、「フラッシュリーディング(全脳型分析的速読法)」等の資料も併(あわ)せて参照してください。
■かつて、当方の指導する生徒に、「私は作問者と戦うつもりで問題に当たっています」ときっぱりと言い切る者がいました。問題が解けないことが悔(くや)しい、作問者の仕掛けた罠(わな)にはまるのが悔しい、とその生徒は言い添(そ)えましたが、大人(作問者)の思考力に自分の思考力が及(およ)ばない悔しさと苦悩、そして、それを克服(こくふく)してゆくために、一つひとつの問題に真正面から実直に向き合ってゆこうとする11、12歳の子どもなりの気概(きがい)が、私にはひしひしと伝わってきました。
中学受験を志(こころざ)す皆さんは、中学校側が求めている生徒像がどのようなものかを今一度考え、それをよく心に受け止め、思考したり苦闘(くとう)したりせずともあらゆる夢を楽に叶(かな)えてくれる「魔法の杖(つえ)」の存在を信じて安易にそれにすがろうとするのではなく、「直面した問題の一つひとつを、自身が持てる能力を最大限に発揮して解決してゆく姿勢」、「自分の力で自分を育て、作り上げてゆく姿勢」、「自分の人生を自分の力で築き上げてゆく姿勢」の大切さを常に忘れずにいてください。
また、中学受験国語は、論理や思考力だけで全ての問題が解決するわけではありません。日がな一日机(つくえ)に向かうばかりでなく、時に外界へと視野を広げ、自然や世の中のさまざまな事象に目を向け、五感を働かせて、触れ、感じ、想像し、考えてみる。そして、人との出会いや、人との関わりを大切にし、自分の未来にしっかりと目を向け、自分の生き方を一つひとつ見定めてゆくつもりで、自分自身を磨(みが)き、育(はぐく)んでゆく。そうした姿勢こそが、揺(ゆ)るぎない自分という存在の礎(いしずえ)を築き、人間としての幅を広げ、心の豊かさを培(つちか)うための大切な勉強であると言えます。そのことを常に胸の底に置いて、溌溂(はつらつ)と日々の学習に勤(いそ)しんでもらいたいと思います。
■作問に携(たずさ)わる方々には、受験生の思考力や分析力、検討力を測る本来の目的に沿(そ)い、そして、何より子どもたちのために、その場しのぎの安直な手法や機械的な手法によって容易(たやす)く崩(くず)されないよう、より巧(たく)みに工夫を施(ほどこ)してもらいたいと思います。今後、『不適切肢を選ぶ問題』や『当てはまるものを全て選ぶ問題』、『三択で絞(しぼ)り込みに迷う問題』、あるいは、『資料や図表を用いつつ本文との確実な照合によらねば判断が困難な問題』、『二種の異なる文章を関連付けて考えさせる問題』等を増やしてゆくのも一手でしょう。
また、塾講師や家庭教師の方々にも、子供たちが論理的な思考力と多角的な検討力とを備え、自分の頭をよく使い、思考作業による判断と結果に確かな手応(てごた)えが得られるよう、より本質的で精緻(せいち)な工夫を指導に施してもらいたいと思います。

目 次
■一般手法(30種)
(1)論外
(2)カモフラージュ(カモ/偽装)
(3)ホイホイトラップ(まき餌)
(4)コピペ(フェイク/ダミー)
(5)キラキラワード(キラキラフレーズ)
(6)直前トラップ(直前に書いてあるもん💛)
(7)おとり(また引っかかったもん💛)
※希望的観測
(8)ウソ(違うこと言ってる/デタラメ)
(9)根拠無し(読み取り不能/ヨミフ/情報無し/読み取れない/述べられていない/書かれていない)
(10)真逆(逆のこと言ってる)
(11)説明不足(具体性欠如/抽象論)
(12)要素不足(部品不足/ポンコツ)
(13)視点違い(視点ずれ/よそ見禁止)
(14)論点違い(ロンチ/論点のすり替え)
(15)方向違い(崖からバンジー/方向ズレ)
(16)展開無視(ワープ/タイムトラベラー)
(17)矛盾(両立不可能)
(18)表面的説明(形式的説明)
(19)踏み込み不足(前段階/トンズラ/寸止め)
(20)ファンタジー💛(お花畑/おとぎの国)
(21)誇張(盛ったでしょ)
(22)誇張カモ (言い過ぎ?/大げさ?/極端?)
(23)強調カモ(こそ?/まさに?)
(24)断定(断言/言い切ったな!)
(25)断定カモ (絶対に?/必ず?/常に?)
(26)限定(そんだけぇ~💛/限定的一致)
(27)限定カモ(だけ?/のみ?/しか?)
(28)全称(全部が全部!)
(29)全称カモ(全て?/どれも?/みな?)
(30)お楽しみ箱(びっくり箱)
■飛躍(論理的飛躍)10種
(31)飛躍(論理的飛躍)
(32)意志飛躍(そんなつもりないし!)
(33)意志調整(積極度・消極度の調整)
(34)二分法(白黒思考)
(35)期待・願望飛躍(別に期待してないし)
(36)好意飛躍(別に好きってわけじゃないし)
(37)拡大解釈(意味広げたでしょ)
(38)単純化(単純な話さ)
(39)無理な一般化(例外は無いのけ?)
(40)カゼオケ論法(ドミノ論法/連鎖飛躍)
■前提操作(18種)
(41)前提のすり替え(聞いてないよ!)
(42)暗黙の前提(暗黙の了解)
(43)人物像不一致(人物像のすり替え)
(44)人物関係のすり替え(関係性が違くね?)
(45)条件トラップ(『条件』作ってみた!)
(46)仮定トラップ(『仮定文』作ってみた!)
(47)因果トラップ(『理由』作ってみた!)
(48)基準トラップ(『基準』作ってみた!)
(49)つまみ食い論法(チェリーピッキング)
(50)歪曲・曲解(ねじ曲げ/ネジマゲドン)
(51)肯定前提(肯定してたっけ?)
(52)前向き前提/決意前提
(53)受け入れ前提(受け入れてたっけ?)
(54)理解前提(理解してたっけ?)
(55)認識前提(認識してたっけ?)
(56)好意前提(好きになってたっけ?)
(57)期待/願望/あこがれ前提
(58)推定妥当(確かにアリえ~る!)
■偽装論理(15種)
(59)比較トラップ(別に比べてないし!)
(60)価値トラップ(価値判断)
※価値語・評価語
(61)比較価値トラップ(比較と価値の合体!)
(62)因果の逆転
(63)因果要素の倒置
(64)偽装因果(因果関係作ってみた!)
(65)同語反復(おんなじこと言ってる)
※循環論法
(66)前後同一(ダブり/同語反復)
※同語反復
※循環論法
(67)類比論法(その例えは無関係!)
(68)屁理屈(ああ言えば、こう言う)
(69)ゴール違い(結論間違えた!)
(70)コース違い(道筋間違えた!)
(71)無関係(関連性無し/虚偽の関連付け)
(72)飛躍偽装(これ正解かよ!)
(73)意味不明(イミフ/ナゾ/曖昧/支離滅裂)
■すり替え一般(38種)
(74)主語のすり替え(えっ、マジか!)
(75)心情違い(気持ちが違う)
(76)理由違い(理由のすり替え)
(77)きっかけ違い
(78)いきさつ違い(経緯違い)
(79)目的違い(目的のすり替え)
(80)対象違い(対象のすり替え)
(81)あらすじトラップ
(82)語のすり替え(語意のすり替え)
(83)換言トラップ
(84)ぼかし語トラップ
※概念語
(85)迂言(うげん)法
(86)一般論(普通はそうだろ)
(87)常識・道徳論(文句言うな逆らうな)
(88)比喩説明不適
※実在トラップ
(89)暗示・象徴トラップ
(90)可能性トラップ
(91)主題違い(要旨違い/主題トラップ)
(92)趣旨違い(脱線/意味違い/意味ズレ)
(93)非主要(後回しでよくね?)
(94)主観(どっかの誰かさんの考え)
(95)それってあなたの感想ですよね!
(96)成り済まし(偽装理由)
(97)別の事柄の説明(別件の説明/不正流用)
(98)余計(邪魔/異物混入/蛇足/お邪魔虫)
(99)替え玉(身代わり)
(100)偽証トラップ
(101)回想部の変造(思い出作ってみた!)
(102)定義のすり替え(定義ちがくね?)
(103)語句矮小化(なんか意味弱まった…)
(104)論点矮小化(大した問題かよ!)
(105)反対語トラップ
(106)単純例示
(107)半分ずっこ(ハーフ&ハーフ)
(108)要素倒置(要素不足誤認)
(109)具体例照合(落ち着いてあわてろっ💛)
(110)否定不能(消極的肯定/出直して来いや)
(111)正答もどき(ゴースト/パラレルワールド)
■関連手法(12種)
*1:わら人形論法(ダミー攻撃/歪曲攻撃)
*2:道徳主義トラップ(道徳をダシにせよ!)
*3:自然主義トラップ(自然に倣え!)
*4:新規主義トラップ(新しければいいの?)
*5:伝統主義トラップ(古ければいいワケ?)
*6:論点まき散らし(めまいがするぜ)
*7:事実の主張へのすり替え
*8:前後即因果(祈ったから合格した!)
*9:逆は必ずしも真ならず(逆立ち飛躍)
*10:裏返しは必ずしも真ならず(裏返し飛躍)
*11:疑似相関(見せかけの相関)
*12:比較不成立(比べるなよ!)
① 一般手法
(1)論外
・設問の要求に対し、選択肢の説明における内容が明らかに間違っている。「嘘(うそ)」、「読み取れない」、「無関係」、「方向違い」などの判断により、比較的除外しやすい。ただし、(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等、「正解でありながら正解と思えなくする手法」が用いられた正答肢を「確信を持って消去」してしまぬよう注意が必要。「設問で何が要求されているのか」を確かめもせずに、また、時間的制約から「本文を照合せずに、記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断する」受験生が相当に存在することを作問者が承知のうえで作問していることを忘れてはならない。
(2)カモフラージュ(カモ/偽装(ぎそう))
・文中語句を敢(あ)えて使用せずに言い換(か)えたり、抽象化したり、あるいは一歩踏(ふ)み込んだ説明をしたりすることで、「正解でありながら正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある」。十分な検討をせずに、専(もっぱ)ら「印象や感覚」、あるいは「機械的処理法」によって解答を決める受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「本文に直接そんなことは書かれていないから」、「本文中の言葉やキーワードが入っていないから」、あるいは、「自分が各所に書き込んだ『×印』が最も多いから」のように表層にばかり引きずられて(1)「論外」として早々に除外してしまわぬよう注意。普段から「言い換え」や「抽象化」の視点をもち、「自分の頭を使って考える力」を養い、「本質に踏み込んで理解する」学習に取り組んでおきたい。
(3)ホイホイトラップ(まき餌(え)/おびき寄せ/コラージュ/ツギハギ/寄せ集め)
・本文中の「キーワード」や「キーフレーズ」、また、(5)「キラキラワード」や「魅力的・理想的な語句」等を散りばめて目立たせ、逆に「正答肢」には「言い換えられた語句」を使用してカモフラージュ(偽装)して誤答肢におびき寄せる。
(4)コピペ(フェイク/ダミー)
・本文中から一部をそっくり引用し、いかにも説明らしく見せかけてあるだけである。「本文に書いてあるから」、「線部の近くに書いてあるから」といった安直な判断の仕方をせぬよう注意。(3)「ホイホイトラップ」の一種。
(5)キラキラワード(キラキラフレーズ/うっとり💛ワード)
・精神力によればいかなる障害も克服(こくふく)できるとする「精神論」や、「人間の生き方や人生、生きる姿勢」に通ずる表現等、情緒(じょうしょ/じょうちょ)や信念に訴(うった)えかける語句を作為(さくい)的に使用して目立たせ、誤答肢に誘導する。説明的文章や随筆文等においても同様に、魅惑的、空想的なフレーズには注意が必要だ。美しくキラめくものに幻惑(げんわく)されて正常な判断力を失わないよう注意しよう。(3)「ホイホイトラップ」の一種。
■キラキラワード/キラキラフレーズの例
・力の限り(全力で/一生懸命に/精一杯) ・決してくじけない(あきらめない) ・現実に向き合う(を受け止める/を受け入れる) ・困難に向き合う(立ち向かう/を乗り越える/を克服(こくふく)する ・自分自身に向き合う(打ち勝つ/を見つめる/見つめ直す) ・意志を貫(つらぬ)く ・信念を貫く ・自分らしく生きる ・自分らしさを大切に(求める) ・ありのままの自分 ・自分を信じる ・自分の可能性を信じる ・自分に正直に生きる ・前向きに生きる ・未来を信じる(見つめる/切り開く/へと踏(ふ)み出す) ・一瞬一瞬を大切に ・成長をとげる ・かけがえのない友(友情/命/家族/絆(きずな)/時間/思い出/存在/地球) ・互(たが)いに信頼し合う(認め合う/尊重し合う) ・絆(きずな)を大切に(結ぶ/深める) ・真の友情を築く(育(はぐく)む) ・心に寄り添(そ)う ・心のよりどころとする(支えとなる) ・共に支え合う(理解し合う) ・力を合わせて ・手を取り合って(携(たずさ)えて) ・生きがいとする ・幸福をかみしめる(つかみとる)
※尚(なお)、上に挙(あ)げた表現は、記述等の説明で適宜(てきぎ)使用できるよう、自身の中によく取り込んでおくこと。
(6)直前トラップ(直前に書いてあるもん💛)
・問われている箇所(かしょ)の「直前」に書かれてある内容をそっくり引用し、いかにも説明らしく見せかけてあるだけである。問われている箇所の、特に「直前」に書かれてある事柄(ことがら)にしか注意が向かない受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「線部の直前に書いてあるから」とか、「本文にそのまま書いてあるから」といった単純な理由で選択してしまわないこと。(4)「コピペ(フェイク/ダミー)」、(3)「ホイホイトラップ」の一種。
(7)おとり(また引っかかったもん💛)
・本文の内容上、解答者が最も誤解しやすいと推定される解釈を説明し、誤答におびき寄せる。また、「そうだったらいいな」、「そうであってほしいな」のように、解答者自身がいかにも抱(いだ)きやすい願望や「希望的観測」が説明内容とされていることもあるので注意。(3)「ホイホイトラップ」の一種。
■希望的観測
・「そうだったらいいな」、「そうであってほしい」のように、明確な根拠や事実によらずに自分の願望を優先して都合の良いように事の成り行きを推測したり、判断したりすること。「今日の組分けテスト、前回よりもずっと手応(てごた)えがあった。今度こそクラスアップできそうだ」など。この例文の場合、「テスト結果という事実(根拠)」が明らかとなる前に、「手応え」という感触をもとに「クラスアップという自身の願望を都合よく推測に反映」させている。
(8)ウソ(違うこと言ってる/デタラメ/でっち上げ) ※ウソ要素の組み込み
・説明内容そのもの、あるいは説明の一部に虚偽(きょぎ)が組み込まれている。「要素の有無」や「要素の正否」のみを判断基準としていると、却(かえ)って「部分的な誤(あやま)り」や「文脈そのものの誤り」等に気づけない恐れもある。日々の地道な訓練の継続によって、「選択肢における一文一文を読解する力」と「多角的に検討する力」とを身に付けてゆこう。
(9)根拠無し(読み取り不能/ヨミフ/情報無し/述べられていない/書かれていない)
・その説明内容を一切本文から読み取ることができない。ただし、正解でありながら言い換え等により正解と思えなくする(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等の手法が用いられた「正答肢である可能性」も排除してはならない。(1)「論外」の一種。
(10)真逆(まぎゃく)(逆のこと言ってる)
・選択肢の「説明そのもの」、あるいは、「選択肢に含まれる一部」が、本文とは「真逆の内容」となっている。
(11)説明不足(具体性欠如(けつじよ)/抽象論/テキトー)
・趣旨(しゅし)や方向性は正しいが、具体性に欠(か)けていたり、あるいは、抽象論に過ぎなかったりし、説明として不十分、もしくは不完全である。「何となくそれらしい説明」に思えるものを選ぶのではなく、そもそも説明が「具体的、かつ、的確であるかどうか」、「曖昧(あいまい)な所は無いかどうか」をよく検討できるようになろう。
(12)要素不足(部品不足/ポンコツ)
・説明が完結するための要素や条件が不足している。「要素不足」に気づかれないよう、表現や内容を微妙(びみょう)に調整してある場合が多い。
(13)視点違い(視点ずれ/よそ見禁止)
・選択肢の説明において、無関係な「視点要素」が組み込まれている。例えば、絵画を見るきに「目を向ける点(視点)」が、「芸術性」と「技法」とでは捉(とら)え方が変わる。また、「素人」や「専門家」など、「観察する立場(視点)」によっても捉え方が変わる。「何に着目するのか」、あるいは、「どのような立場から見るのか」によって物事の捉え方は様々に変わるので、選択肢の説明内に含まれた各「視点要素」について、「その正否(正しいか、正しくないか)」や、そもそも「その視点要素が必要なのかどうか」等についてよく検討しよう。
(14)論点違い(ロンチ/論点すり替え/論点ずらし)
・「設問における論点」とは「無関係な論点にすり替え」て説明されている。また、「論点を微妙にずらしてある」場合や、「説明内の一部に無関係な論点を組み込んである」場合も多いので注意。
《例》
・花子さん:愛ちゃん、あんた、約束守ってねって、言ったでしょ!(正しい論点)
・愛子さん:ふんっ! 花ちゃんだって約束破ったことあるじゃん!(別の論点)
【だって論法】
・相手の主張とは別の論点を持ち出して自分の言動を正当化したり、言い逃(のが)れをしたり、自分の責任を帳(ちょう)消しにしようとしたりする論法。
①お前だって論法(ブーメラン論法)
・ジョン:おい、カンニングするなよ!
・ポール:お前だって、今、俺の答え見てるし!
(論点のすり替え/言い逃れ/相対化/相殺(そうさい))
②あいつだって論法
・警官:20キロの速度オーバーだ! むふん! 今日は残念だったね! (^O^)/」
・運転手:そんなぁ、ちょっと勘弁(かんべん)してよぉ……。あっ! ほら、見てよ! あいつだってすっごいスピード出してるじゃん! 早くあいつ捕(つか)まえてよっ!
(論点のすり替え/言い逃れ/相対化)
③みんなだって論法
・ママ:いけません。ゲームなんか買ってあげません!
・子ども:ねえぇ、買ってよぉ。みんなだって持ってるんだからぁ!
(正当化/論点のすり替え/相対化)
※「だって」に代えて、「~も/~でも/~の場合も」等が用いられることも多い。
※相殺(そうさい):差し引いて、帳(ちょう)消しにすること。
※相対化:「その事案が特殊なものではなく、取り立てて問題化する必要が無い」とすること。
(15)方向違い(崖(がけ)からバンジー/ガケバン/方向ズレ/方向音痴(おんち)/見当違い/的(まと)外れ/明後日(あさって)の方向)
・「設問の要求」に対し、「異なった方向性での説明」となっている。「設問の要求」を正しく把握(はあく)せず、「思考の方向」を正しく定めぬままに判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。見当違いの方向に全力で突き進んで崖(がけ)から派手に転落せぬよう、設問の要求を正しく把握し、正しく方向付けて思考する訓練を怠(おこた)りなく。(1)「論外」の一種。
(16)展開無視(ワープ/タイムトラベラー/時系列無視/展開不一致)
・本文における「時系列」、あるいは、「展開や変化」に合致(がっち)しない説明となっている。「制限時間内に全問を解き切るためには本文を通読してはいけない」と指導されている中学受験生は少なくない。しかし、「本文の情報を部分的、断片的に拾い上げていくような読み方」、あるいは、「記憶に頼(たよ)って選択肢の読み比べだけで判断する」、といった「スピード重視・精度犠牲型」の取り組み方を続けていても実質的な対処は困難だ。本文全体における「大きな流れ=時系列や展開・変化、構成」等を通読段階でしっかりと掴(つか)み、「この時点ではまだそのような心情を抱(いだ)いていない」、「この時点では以前の主張を修正している」というように、問われている箇所(かしょ)を「基点」として「それ以前に起きたこと(述べられていること)と、それ以後に起きること(述べられていること)」等との連続性や関連性を全体視点で判断できるよう訓練を積んでゆこう。
(17)矛盾(むじゅん)(両立不可能)
・選択肢に書かれた説明内容が、本文に書かれた意味内容と論理的にかみ合わない。
※矛盾(むじゅん):二つの事柄(ことがら)のつじつまが合わないこと。筋道が通らないこと。
【自己矛盾(むじゆん)】
・自分自身の考えや言動の中に食い違いが生じ、矛盾(むじゆん)すること。自己の言動に自己を否定する要素を含んでいること。自家撞着(じかどうちゃく)ともいう。
《例》
・花子さん:この世界に『絶対』と言えるものなど、『何一つ無い』のだわ!
・愛子さん:『絶対が存在しない』ことが『絶対だ』なんて、あんた、言ってること、絶対おかしいわよ!
・花子さんは、「この世界に絶対といえるものは何一つ存在しない」と主張しつつ、自分のその発言が「絶対のものだ」と断言しているので、その主張は矛盾しています。「あの子、いつも他人の批判ばかりするからダメなのよ(自分自身が『あの子』の批判をしている)」という主張も「自己矛盾の例」として覚えておくとよいでしょう。
(18)表面的説明(形式的説明/上辺(うわべ)の説明) ※(19)『踏み込み不足』参照!
・上辺をなぞっただけの表面的、あるいは形式的な説明に止(とど)め、「根本的・本質的な説明」が避(さ)けられている。つい上辺の説明に引っ張られて誤答に誘導されてしまわぬよう注意しよう。
(19)踏み込み不足(前段階/トンズラ/寸止(すんど)め) ※(18)『表面的説明』参照!
・例えば、本文において、「AによってBが成り立ち、そのBによってCとなる」のように、いくつかの段階や因果関係を経て「主要な論点C」に至る文脈となっている場合などに、設問の要求に対応するはずの「C」ではなく、その前段階(寸前)にある「B」を趣旨(しゅし)として説明してある。
(20)ファンタジー💛(お花畑/おとぎの国)
・事実に基(もと)づかない空想的な虚構(きょこう)や、都合のよい勝手な解釈や突飛(とっぴ)な解釈が尤(もっと)もらしく述べ立てられている。(1)「論外」の一種。
(21)誇張(こちょう)(盛(も)ったでしょ)
・適切な範囲(はんい)を超え、実際よりも大きく捉(とら)え直した説明内容となっている。小手先(こてさき)テクニックに見られるような、思考もせずに「言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」といった安直な判断の仕方をするのではなく、「内容に正しく見合った文脈と表現で説明されているかどうか」を検討、判断する力を養おう。また、記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断せず、本文との照合と検討とを徹底したい。
(22)誇張(こちょう)カモ(言い過ぎ?/大げさ?/極端(きょくたん)?)
・小手先テクニックに見られるような、「『言い過ぎ・大げさ・極端』な印象を与える選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「印象や感覚による安直な判別法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『誇張表現』を用いて目立たせることで、『正解でありながら』正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。(2)「カモフラージュ」の一種。
(23)強調カモ(こそ?/まさに?)
・小手先テクニックに見られるような、「『~こそ/まさに~』のような『強調表現』が用いられた選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『強調表現』を用いて目立たせることで、『正解でありながら』正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。(2)「カモフラージュ」の一種。
(24)断定(断言/言い切ったな!) ※(25)『断定カモ』参照!
・本文においては「~だろう(推量)」、「~かもしれない(可能性)」、「~ようだ(推定)」といった「非断定的な認識や判断」が読み取れるにもかかわらず、選択肢の説明においては「正しいもの・確かなもの・完全なもの」として「断定(断言)」されている。
(25)断定カモ(絶対に?/必ず?/常に?/決して?) ※(24)『断定(断言)』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『絶対に・必ず・常に・決して』のような『断定表現』が用いられた選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『断定表現』を用いて目立たせることで、『正解でありながら』正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。(2)「カモフラージュ」の一種。
(26)限定(そんだけぇ~💛 /限定的一致) ※(27)『限定カモ』参照!
・本文における内容について、その「一部」についてしか説明されておらず、そのため、『限定的には一致している』が、本来求められる説明としては不完全である。
(27)限定カモ(だけ?/のみ?/しか?) ※(26)『限定(そんだけぇ~💛)』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『だけ・のみ・しか』などの『限定表現』のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『だけ・のみ・しか』などの限定表現を用いて目立たせ、『正解でありながら』正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。(2)「カモフラージュ」の一種。
(28)全称(ぜんしよう)(全部が全部!) ※(29)『全称カモ』参照!
・ある事柄(ことがら)について、「一部についてはそう(▲)である」のように、本文においては筆者の「限定的な認識や判断」が読み取れるが、選択肢の説明においては「全てがそう(▲)である」といった内容にすり替えられている。
(29)全称(ぜんしよう)カモ(全て?/どれも?/みな?) ※(28)『全称』参照!
・小手先テクニックに見られるような、「『全て・どれも・みな』のような全称表現のある選択肢は選ぶな」といった、思考を前提としない「安直な機械的処理法」が指導されている小学生(中学受験生)が相当に存在することを作問者は心得ており、それを逆手(ぎゃくて)に取り、作為(さくい)的に『全て・どれも・みな』のような全称表現を用いて目立たせ、『正解でありながら』正解と判断されないように偽装(ぎそう)してある。(2)「カモフラージュ」の一種。
(30)お楽しみ箱(びっくり箱/気絶フェスティバル)
・設問形式の一つとして、「本文全体の内容の説明」、「文章全体の表現上の特色」等について適切なものを選ぶといった問題については、通常大設問内の最終問題として設定されていることが多く、照合と検討に予定外に時間を取られてしまう恐れがあるため、テストや演習などでは、その開始段階で問題全体の構成や形式、内容等を速(すみ)やかに確認する必要がある。
■本文と照合、検討する必要のある項目(こうもく)については、「背景・事情」、「本文の内容」、「心情・心情変化」、「葛藤(かっとう)」、「人物像」、「人物どうしの関係性」、「視点人物」、「場面・構成」、「時間軸(じく)」、「回想部」、「展開・変化」、「成長・生き方」、「主題・要旨」等の読解関連についての他、「会話表現の特徴や効果」、「文章の特徴や効果」、「情景描写(びょうしゃ)の特徴や効果」、「―(ダッシュ)」や「……(リーダー)」等の符合(ふごう)の使われ方等の描写全般について、さらに、「象徴(しょうちょう)」や「暗示」等の描写(びょうしゃ)技巧(ぎこう)について、「比喩の有無や、その使用頻(ひん)度」、「擬音(声)語・擬態語の有無や、その使用頻度」、「歴史的現在」、「皮肉」、「反語」、「逆説」等の修辞(しゅうじ)に関するものなど多岐(たき)にわたる。全体視点で様々な「分析アンテナ」を働かせながら通読する訓練を地道に積んでおこう。
※修辞(しゅうじ):言葉を効果的に使って表現すること。その技術。レトリック。
【視点人物】
・筆者(作者)、主人公、第三者等、「誰の視点から語られているか(描かれているか)」を問われる。
【象徴】
・本文において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写(びょうしゃ)であるが、実は「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味や役割を与えられたものごと。情景描写以外にも、日常ありふれた器具、飲食物、色、形状、音、臭い、味、感触、人物の言動、様子、また、生き物の様子など、人間の五感や感情等を通して描かれる種々(しゅじゅ)のものが、作家の意図と工夫により「象徴素材」として利用される。「象徴する内容」については、その物事から受ける「一般的なイメージ」で説明できるわけではないので、あくまで「本文の内容との『重ね合わせ』」による精度の高い解読訓練が求められる。
【暗示】
・情景描写(びょうしゃ)や種々(しゅじゅ)の事象(じしょう)描写によって、その後に起こる「事件」や「展開」を予(あらかじ)め読者にそれとなく
ほのめかしておく手法。伏線(ふくせん)。暗示内容がその後に具体的な結果や役割として明らかとなる場合を、俗(ぞく)に「伏線回収」と呼ぶことがある。
【皮肉】
①遠回しに意地悪く相手を非難すること。アイロニー。「(宿題を大量に与えられた生徒が)先生は大変な生徒思いですね!(真意は『こんなに宿題を大量に出されたら非常に迷惑だ』)」など。
②予想や期待とは反対の(良くない)結果になること。「皮肉にもお巡(まわ)りさんは泥棒(どろぼう)に財布を盗まれた」、「まさかあの最下位チームに負けてしまうとは皮肉だ」 など。
③自分に対する落胆(らくたん)した気分を表す。「雨天により運動会が中止と決定した直後に、皮肉にも雨が上がった」など。
※中学受験国語では特に「皮肉①」に関連する出題が多いが、「皮肉②」の関連問題も散見される。
【反語】
①「疑問文の形」をとりながら、暗(あん)に「強い否定」の意味を表す強調表現。「そんな不思議な話が本当にあるのだろうか(=そんな不思議な話が本当にあるはずがない/絶対にない/決してない/断じてない)」 など。
※中学受験国語では「反語①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②反語を使った皮肉。ある語を本来の意味とは反対の意味に使うことで、皮肉を込める言い方。アイロニー。「(遅刻した人に)随分とお早い到着ですね」など。
【逆説】
①「急がば回れ」、「負けるが勝ち」、「かわいい子には旅をさせよ」のように、一見矛盾(むじゅん)しているようだが、実は真理の一面を表す説。パラドックス。
※中学受験国語では「逆説①」に関連する出題が多いので、しっかりとこれを押さえておきたい。
②通常とは反対の方向からものごとを捉(とら)えたり、考えを進めたりするさま。「逆説的に言えば、苦労が多いほど、人生を豊かにするということだ」など。類似表現に、「逆に言うと」、「裏を返せば」、「反対に言えば」などがある。

② 飛躍(論理的飛躍)
(31)飛躍(ひやく)(論理的飛躍/根拠不足)
・「十分な根拠に基(もと)づかない内容説明」、あるいは、「正しい筋道を飛び越えた内容説明」である。「論理上の飛躍の度合い」が小さい場合や大きい場合など、さまざまに調整してある。論理的な思考訓練が不十分で、判断がその都度「印象や感覚」によって揺(ゆ)れやすい小学生を誤答に誘導しやすい。「前提」と「結論」との間の「関連性・連続性・因果関係」を的確に捉(とら)え、また、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」といった「可能性の視点」も持って、客観的、総合的に判断しよう。また、小手先テクニックに見られるような、思考もせずに「言い過ぎだ、大げさだ。だから消去!」などといった方法で安直に判断せず、文章を論理的に読み、把握
(はあく)する訓練を怠(おこた)らぬように。
《例》
・太郎君:花子と愛子は、やっと仲直りしたようだね。
・次郎君:二人は絆(きずな)を今以上に深めて、互(たが)いに支え合って生きていくのさ。
(32)意志飛躍(そんなつもりないし!)
・筆者の考え、あるいは、登場人物の考えや気持ちに沿(そ)わない「意志表現」で説明してある。(31)「論理的飛躍」の一種。
■「歩もウとする」、「仲直りしヨウとする」、「逃げマイとする」のように、「意志を表す助動詞」である「う・よう・まい」が用いられている場合が多いが、ぱっと見では目立たないために「飛躍」に気づきにくい。
■また、「認める・受け入れる・決める・向き合う・選択する・否定する・評価する」といった「もともと意志を含意(がんい)する動詞=意志動詞」や、「~するために・~する目的で」、「~しなければならない・~つもりだ」といった、やはり「意志を含意する表現=意志表現」を用いることで飛躍に気づかれないよう調整してある場合も少なくないので十分に注意しよう。
《例》
・太郎君:「今回のテスト結果、どの教科も、まあまあの成績だったぜい!」
・次郎君:「次回のテストではクラス上位を狙(ねら)ってるってわけか!」(狙う=意志)
※動詞に注意! 相手の意志を勝手に飛躍させている!
(33)意志調整(積極度・消極度の調整)
・本文において、筆者(作者)、あるいは登場人物が、ある事柄(ことがら)について「意志を抱(いだ)いていることが間違っていない」場合に、選択肢においてはその「意志の度合い」や「積極度や消極度」を微妙にずらして説明してある。(31)「論理的飛躍」の一種。
(34)二分法(白黒思考)
・「仲間ではない」という説明は、必ずしも「敵である」ことを意味するわけではない。他に「中立」や「無関係」という立場が想定されるにもかかわらず、そのような「中間層の可能性」を排除し、「二者」のみを前提とした説明がされている。(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」の一種。
《例》
・太郎君:今回のテスト、国語の成績が最悪だったよ。
・次郎君:つまり、勉強をさぼったということだね。
(35)期待・願望・憧(あこが)れ飛躍(ひやく)(別に期待してないし/別に願ってないし/別に憧れてないし)
・筆者(作者)、登場人物がそもそも抱(いだ)いていない「期待や願望・憧れ」が述べられている。「仲直りがしたいと考えて」、「帰りたがっている」のように「希望(願望)を表す助動詞」である「~たい・~たがる」が用いられている場合が多いが、ぱっと見では目立たないために「飛躍」に気づきにくい。
■また、「~してほしい・~を願う・~を望む・~を期待する」といった表現が用いられている場合もあれば、「願望・期待」を前提とした「きっと~だろう」、「きっと~ちがいない」のような表現を用いることで飛躍に気づかれないよう調整してある場合も少なくないので十分に注意しよう。
(36)好意飛躍(ひやく)(別に好きってわけじゃないし)
・ある作品において、「男女間における親しい関係」が描かれていても、それが必ずしも「両者間における好意や恋愛感情」を意味しているとは限らない。人物の心情や相互(そうご)の関係性、その後の展開などを、思い込みにより都合よく飛躍させて捉(とら)えてしまわないよう注意しよう。(31)「論理的飛躍」の一種。
(37)拡大解釈(意味広げたでしょ)
・「休憩(きゅうけい)してよい」を「遊んでもよい」と解釈するなど、ある事柄(ことがら)についての説明や、選択肢の説明そのものが、本来の意味内容を都合よく広げた解釈となっている。(31)「論理的飛躍」の一種。
(38)単純化(単純な話さ)
・例えば、「国語学習では漢字の習得がとても大切だ」という一説を、「国語学習では漢字が書ければよい」と再解釈するように、背景や事情等の重要な要素を意図的に省略し、簡略化して説明する。(14)「論点違い」、(31)「論理的飛躍」の一種。
(39)無理な一般化(例外は無いのけ?)
・「ポチも、ゴンも、モモも、人なつこい犬だ。(AもBもCも▲だ)」、「だから、犬はみんな人なつこい動物だ。(だから、全体も▲だ)」のように、例外の存在を前提に含めずに、一部の事例をもとに、全てが同じであるかのように一般化して説明する。(31)「論理的飛躍」の一種。
《例》
・花子さん:スズメも、ハトも、カラスも、空を飛ぶことができるわ。
・愛子さん:鳥という生き物は、みんな空を飛べるのね。
【レッテル貼(は)り】
・「太郎は真面目(まじめ)だ。」、「花子はおしゃれだ」というように、人物や事物(じぶつ)について主観的に一般化し、評価を与えることを「レッテル貼(は)り」という。また、「俺って、天才!」、「私って、ダメ人間なの」のように、自分で自分にレッテル貼りをする場合もある。
・「次郎は嘘(うそ)つきだ」、「愛子は意地悪だ」のように、良くない情報のみをもとに主観的に一般化し、一方的に悪い評価を与える場合には、皮肉を込めて相手を非難するにとどまらず、「対人攻撃」として「悪口」や「いじめ」、「差別的言動」に繋(つな)がる場合も少なくない。
(40)カゼオケ論法(ドミノ論法/連鎖(れんさ)飛躍(ひやく))
■風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる
【強い風が吹くと、土ぼこりが立つ】→【土ぼこりが目に入って目を傷(いた)め、盲人(もうじん)が増える】→【盲人は三味線(しゃみせん)の演奏を生業(なりわい・せいぎょう)とするので、三味線のに張るための猫の皮が沢山必要になる】→【猫が減る】→【猫を天敵とする鼠(ねずみ)が増える】→【鼠は桶(おけ)をかじるので、桶の需要が増える】→【桶屋が儲(もう)かって喜ぶ】
・「風が吹けば桶屋が儲かる」は、「ある事柄(ことがら)が原因となって、まったく無関係と思われるところに影響が出ること」、また、「当てにならない期待をすること」という意味のことわざである。選択肢の説明においては、「AだからB、BだからC、CだからDである」のように「複数の因果関係をつなぎ合わせて都合よく論理を飛躍させていないか」を確かめる視点も備えよう。(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。

③ 前提操作
(41)前提のすり替え(聞いてないよ!/産地偽装(ぎそう)) ※基本的な論理③『前提のすり替え』(p.5)参照!
・本文における「正しい前提(正しい事実内容)」を「正しくない前提」にすり替えたうえで論理展開している。本文における「前提(正しい事実内容)」と「解答者の把握した前提内容」とが合致(がっち)していなければ、その都度判断に揺(ゆ)れが起きてしまう。本文を通読せず、また、本文との照合もせずに、専(もっぱ)ら記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「この説明は、前提がすり替わっている」と見抜けるようになろう。
※前提:論理を支える土台。因果関係や論理を組み立てるうえでの土台となる重要な条件。
《例》
・花子さん:夏休みの宿題、もう全部終わったもんね! (前提:自力で宿題を処理)
・愛子さん:先生にバレなきゃいいね! (前提:花子がズルい手を使って宿題を処理)
・花子さん:もうっ! 違うってば! 意地悪!
(42)暗黙(あんもく)の前提(暗黙の了解(りょうかい))
・「筆者の主張の根底にある思想」や、本文に直接書くまでもない「当たり前の事柄」などを「暗黙の前提」に置いて説明されるため、まさかと思うような内容の説明となる場合があり、正解でありながら「明らかな誤り」として早々に除外(消去)してしまう恐れがある。判別難度が高く、正答率を極端に下げるのにも有効な手法。本文の内容把握の学習においては、「明示された前提」と「表現の裏にある前提」に加え、「暗黙の前提」の三つをしっかりと押さえ、そのうえで「前提と結論との関係=因果関係」を捉(とら)える訓練をしっかりと積もう。
※暗黙の前提:特に言明せずともわかりきった事柄。
■表現の裏にある前提
・例えば、選択肢の説明内に「決心した」という表現があったなら、その人物が「それまで決心できずにいた」のような経緯が推測され、また、「仲直りした」とあれば、「それまで関係がこじれていた」のような経緯が推測されるが、それが実際に前提として本文の内容に合致(がっち)するのかどうか、そもそも「決心」や「仲直り」自体が事実であるのかどうかも含(ふく)め、思い込みによらず照合によって正しく掴(つか)む必要がある。
(43)人物像不一致(人物像のすり替え/あんた誰?)
・登場人物や作者・筆者の「人物像」とは「異なる人物像」にすり替えたうえで説明されている。(41)「前提のすり替え」、(42)「暗黙の前提」の一種。
(44)人物関係のすり替え(関係性が違くね?)
・本文における「登場人物同士の関係」、もしくは、「作者(筆者)とある他者との関係」が「異なる関係性」にすり替えられ、それを前提として説明されている。(41)「前提のすり替え」、(42)「暗黙の前提」の一種。
※違(ちが)くて/違く:俗語(ぞくご)。正しくは「違って/違い」とする。また、「違かった」、「違くない」も、それぞれ「違った」、「違わない」と正すこと。
(45)条件トラップ(『条件』作ってみた!) ※(40)『カゼオケ論法』参照!
・【[A]勉強が終わると(条件)+[B]読書をし始めた】、【[A]宿題を済ませたが(条件)+[B]遊べない】、【[A]仲良くなるとともに(条件)+[B]理解が深まる】のように、【Aを条件(前提)として+B(となる/である)】の形式で説明されるが、そもそも[A]という条件(前提)が虚偽(きょぎ)、もしくは不正確である。誘導に都合の良い《虚偽の条件[A]》を「前提」として、しれっと[B]が続くため、よく注意して文脈把握(はあく)しないと《条件[A]》の虚偽に気づくことが難しい。(41)「前提のすり替え」の一種。
■読み手は、文中に提示される事柄(ことがら)(情報)の一つひとつを【条件=前提】として押さえながら、階段を上るようにして文脈を辿(たど)ろうとするが、先を読み進めることに意識を取られていると【条件=前提】に虚偽が仕込まれていてもそれに気づくことが難しく、相手の意図に沿(そ)った思考や判断へといっそう誘導されやすくなる。
(46)仮定トラップ(『仮定文』作ってみた!)
・【[A](もし)勉強が終われば(仮定条件)+[B]読書ができる】、【[A](もし)宿題を済(す)ませても(仮定条件)+[B]遊べない】、【[A](もし)仲良くなれるなら/なれたら(仮定条件)+[B]理解が深まる】のように、【Aを仮定条件(前提)として+B(となる/である)】の形式で説明されるが、そもそも[A]という仮定条件(前提)自体が虚偽(きょぎ)・不正確である。(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。
(47)因果トラップ(『理由』作ってみた!/イントラ) ※(64)『偽装因果』参照!
・【[A]勉強が終ったから/ので(原因・理由)+[B]読書をした】、【[A]仲良くなれたため(原因・理由)+[B]理解が深まった】のように、【Aを原因・理由(前提)として+B(となる/である)】の形式で説明されるが、そもそも[A]という条件(原因・理由=前提)自体が虚偽(きょぎ)・不正確である。(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。
(48)基準トラップ(『基準』作ってみた!)
・「一般的に」、「常識的に」、「社会的に」、「伝統的に」、「文化的に」、「世界的に」、「基本的に」、「世代によって」のような「ある基準を示す表現」が提示されているが、実はその「基準要素」は、本来の説明においては無関係であったり、不正確であったりする。(12)「余計」、(13)「視点違い」、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」の一種。
(49)つまみ食い論法(チェリーピッキング/いいとこ取り)
・「今度のテストで敬語の問題が出るよ。翔平君もマツコさんも徹子さんも、同じこと言ってるもん。」のように、多くの情報の中から都合の良い情報だけを選び出し(切り取り・切り出し)、それを根拠(前提)として自分に有利な主張をする。(41)「前提のすり替え」の一種。
※チェリー・ピッキング:おいしい「サクランボ(チェリー)」だけを「選び取って(ピッキング)」食べることから、「つまみ食い」の意。
(50)歪曲(わいきょく)・曲解(きょっかい)(ねじ曲げ/ネジマゲドン)
・本文に書かれてある内容をわざと歪(ゆが)めて説明してある。(92)「趣旨違い」の一種。
(51)肯定(こうてい)前提(肯定してたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)の「心情や考え」が『否定的』であるにもかかわらず、選択肢では『肯定的』であることを前提として説明されている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での「肯定前提」が『否定前提』や『非肯定前提』にすり替わっている場合もある。
(52)前向き前提(前向きだったっけ?) ※「決意前提/非決意前提」
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)の「心情や考え」が『前向きでない』にもかかわらず、選択肢では『前向き』であることを前提として説明されている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『前向き前提』が『後ろ向き前提』や『非前向き前提』にすり替わっている場合もある。
■また、これに類するものとして、『決意前提/非決意前提』に基づいた説明もあるので注意。
(53)受け入れ前提/受け止め前提(受け入れてたっけ?/受け止めてたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)がそれを『受け入れていない(受け止めていない)』にもかかわらず、選択肢では『受け入れている(受け止めている)』ことを前提として説明されている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『受け入れ前提(受け止め前提)』が『非受け入れ前提(非受け止め前提)』にすり替わっている場合もある。
(54)理解前提(理解してたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)がそれを『理解していない』にもかかわらず、選択肢では『理解している』ことを前提として説明されている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『理解前提』が『非理解前提』にすり替わっている場合もある。
(55)認識前提(認識してたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)がそれを『認識していない』にもかかわらず、選択肢では『認識している』ことを前提として説明されている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『認識前提』が『非認識前提』にすり替わっている場合もある。
(56)好意前提(好きになってたっけ?)
・登場人物(筆者・作者)が、異性の他者に対して『特に好意を抱(いだ)いているわけではない(非好意)』にもかかわらず、選択肢では『好意』を前提とした説明がされている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
※機微(きび):表面上は分かりにくい、人の心の微妙な趣(おもむき)や事情。
■逆に本文での『好意前提』が『非好意前提』や『悪意前提』にすり替わっている場合もある。
■また、他者一般への『好意的感情前提⇔非好意的感情前提』、『尊敬前提⇔非尊敬前提』、『嫌悪(けんお)前提⇔非嫌悪前提』、『敵対前提⇔非敵対前提』等、さまざまなバリエーションを想定しておくとよい。
(57)期待・願望・憧(あこが)れ前提(期待してたっけ?/望んでたっけ?/憧れてたっけ?)
・ある事柄(ことがら)について、登場人物(筆者・作者)が特に『期待していない(望んでいない/憧れていない)』にもかかわらず、選択肢では『期待している(望んでいる/憧れている)』ことを前提として説明されている。選択肢における『表現の裏にある前提』を見抜こう。(41)「前提のすり替え」の一種。
■逆に本文での『期待・願望・憧れ前提』が『非期待前提(非願望前提/非憧れ前提)』にすり替わっている場合もある。
(58)推定妥当(だとう)(確かにアリえ~る!)
・本文における主題や要旨(ようし)を前提として、物語文などでは「登場人物のその後の生き方」、説明的文章では「筆者の発展的な考え」等、推定しうる展開や事柄(ことがら)を「断定的に」説明してある。本文には直接書かれていなくとも、主題や要旨、展開等を踏まえると論理的には推断(すいだん)が可能であり、正答となる。(42)「暗黙の前提」の一種。

④ 偽装論理
(59)比較(ひかく)トラップ(別に比べてないし!/ヒカトラ)
・本文中で特に比較対象とはされていない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを、【AよりもBが~】、【Aに比べてBのほうは~】のように比較する形にして説明し、見せかけの説得力により誤答に誘導する。本文に「対照的な事柄(ことがら)」が挙げられていても、それが即(すなわ)ち「比較される内容」であるとは限らない。また、【Aと違ってBは~】、【Aと異なりBは~】、【Aとは対照的にBは~】、【A以上にBは~】のように表現を変えて比較に気づかれないよう調整してあることが多いので注意。
(60)価値トラップ(価値判断してないし!/カチトラ)
・本文においては、ある事柄(ことがら)について特に「良い・悪い」、「正しい・間違っている」等の「価値(評価)」を与えているわけではないのに、選択肢の説明においては、そこに何らかの価値や評価を与え、見せかけの説得力により誤答に誘導する。
■価値語(評価語)
・「良い・悪い」、「正しい・間違っている」、「素晴らしい・最低だ」、「難しい・易しい」、「大切だ・重要でない」、「幸福だ・不幸だ」、「おいしい・まずい」、「安全だ・危険だ」、「満足だ・不満だ」、「十分だ・不足だ」のように、物事について価値や評価を与える言葉を「価値語(評価語)」という。
(61)比較(ひかく)価値トラップ(比較と価値の合体版!)
・本文中で特に比較対象とはされていない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを比較し、そのうえで、さらに【Aに比べてBは良い(悪い)】のように「不必要な価値や評価」まで与え、見せかけの説得力により誤答に誘導する。(59)「比較トラップ」と(60)「価値トラップ」を複合した手法。
(62)因果の逆転
・「受験をする子どもが多いので、この地域は塾が多い(Aだから、Bである)」を「この地域は塾が多いので、受験をする子どもが多い(Bだから、Aである)」のように、因果関係を逆転させて説明してある。「要素の有無(必要な要素を含むかどうか)」や「要素の正否(要素の内容が正しいかどうか」を判断基準とするだけでは却(かえ)って「因果の逆転」に気づけない恐(おそ)れがあるので注意しよう。
《例》
・花子さん:アンタ、勉強しないから(原因)、成績が悪いのよ。(結果)
・愛子さん:違うわよ。成績が悪いから(原因)、勉強する気になれないのよ。(結果)
■「ので・から・ため(に)」等の「原因・理由」を示す語を使用すると「因果の逆転」に気づかれやすいため、「~ことで」や「~ことにより」、「~によって」などの表現に言い換えられていたり、因果関係そのものを捉(とら)えづらくするために巧妙(こうみょう)に表現が調整される場合も少なくない。
(63)因果要素の倒置(とうち)
・「風邪を引いたから、学校を休んだ(Aだから、Bだ)」を、「学校を休んだのは、風邪(かぜ)を引いたからだ(Bであるのは、Aだからだ)」と倒置しても因果関係は変わらず、意味は全く同じである。このように、本文中の「AだからBである」という語順を、選択肢において「Bであるのは、Aだからだ」と倒置して説明されると、因果関係そのものに気づかなかったり、因果関係の確認に手間取る恐れがあるので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。
(64)偽装(ぎそう)因果(因果関係作ってみた!) ※(47)『因果トラップ』参照!
・本文中の、もともと因果関係の存在しない「ある内容《A》」と「ある内容《B》」とを、【A~ので(理由・原因)+Bである(結果)】のように機械的に連結し、因果関係を偽装する。(45)「条件トラップ」の一種。
(65)同語反復(循環(じゅんかん)論法/おんなじこと言ってる!/オウム返し) ※(66)『前後同一』参照!
・「世界平和のためにはどのような社会にすべきだと筆者は考えていますか」という問いに対し、「戦争の起きない社会にすべきである」といった一見もっともらしい説明が書かれてある。しかし、これは、「戦争が起きない社会を実現するためには、戦争が起きない社会を実現する必要がある」と言っているのと同じことなので、何も実質的な説明とはなっていない。設問の内容がそのまま選択肢の説明において無意味に繰り返されていないかどうかを確かめる視点を持とう。
■同語反復
・「雨が降る日は天気が悪い」、「馬から落馬した」、「善人は善(よ)い人だ」のように同語や類義語を無意味に繰り返すことを「同語反復」(同義反復・類語反復)という。トートロジー。
■循環(じゅんかん)論法
・「彼は勤勉(きんべん)だ(結論)。なぜなら、彼は真面目(まじめ)だからだ(根拠)」は、「彼は真面目だ(結論)。なぜなら、彼は勤勉だからだ(根拠)」と同じ意味であり、このように、「結論と根拠とが単純に循環し、証明とならない」論法を「循環論法」という。
※本項とは別に、「『選択肢の説明内』において『同語反復や循環論法』が用いられている場合」については、(66)『前後同一(ダブり/同語反復)』を参照のこと。
(66)前後同一(ダブり/同語反復) ※(65)『同語反復(循環論法)』参照!
・選択肢の説明において、「AはAである(善人は善い人だ)」のように、前半の説明内容と後半の説明内容とが同一となっている。前後を同内容とした「同語反復」であることが露見(ろけん)しないよう、表現や言い回しを巧
(たく)みに調整し、見せかけの説得力により誤答へと誘導する。
■また、「Aである。だから、Aである(彼は真面目だ。だから、彼は真面目だ)」のように、「同語反復」であるとともに「因果関係」の形式をとる「循環論法」が使われている場合もあるので注意。
※露見(ろけん):秘密や悪事など、隠していたことが表に現れること。
※ダブり:「重複(ちょうふく)」の意の俗語。「二倍・重複」等の意味を持つ英語の「double(ダブル)」に由来する。
■本項のように、「同語反復や循環論法」が『選択肢の説明内』に用いられている場合とは別に、『設問文』と『選択肢の説明文』との間で「同語反復や循環論法」が用いられている場合があり、これについては、(65)『同語反復(循環論法)』を参照のこと。
(67)類比(るいひ)論法(その喩(たと)えは無関係!)
・筆者(作者・登場人物)の考えに沿(そ)うと見せかけた「喩(たと)え」を引用し、それが根拠(前提)を補完する有効かつ正当な類例であるかのように偽装(ぎそう)して説明する。「説明内容に類似した喩え(類比)」は、抽象的な事柄(ことがら)や難解な事柄を理解する一助になるうえ、その説明に説得力を与える効果を持つが、元来説明そのものとは「別物」であるため、その「喩え」に本質的に異なる点(相違点)が無いかどうか、また、その「喩え」が説明における補完情報として正しく機能しているかどうかをよく検討する必要がある。
※「慣用句」や「ことわざ」が類比として引用される場合もある。そのことわざや慣用句の正しい意味や用法を知ったうえでないと、それが適切な「類比」であるのか、あるいは単にダミーとしての「類比」であるのかどうかの判断が困難になるので注意。
(68)屁理屈(へりくつ)(ああ言えば、こう言う/言い逃れ/苦しい言い訳)
・無関係な事柄(ことがら)を無理やり関連づけて主張される、まるで筋(すじ)の通らない理屈(りくつ)。日常においては、自分の非を認めたくないときや言い逃(のが)れをするときに、咄嗟(とっさ)に屁理屈を言ってしまうことがあるかもしれない。
(69)ゴール違い(結論間違えた!)
・論理的な筋道は正しいが、そこから導き出される結論が誤(あやま)っていたり、ずれていたり、不完全だったり、あるいは、「可能性の一部」に過ぎない内容だったりする。
(70)コース違い(道筋(みちすじ)間違えた!)
・選択肢の説明における結論自体は正しいが、そこに至(いた)るまでの論理的な筋道に誤(あやま)りがある。結論の正しさに引きずられて慌(あわ)てて判断してしまわぬよう注意。
(71)無関係(関連性無し/虚偽(きょぎ)の関連付け)
・本文中における本来無関係な複数の事柄(ことがら)を無理やり関連づけて、それらしい説明に仕立ててある。本文を照合せず、記憶に頼(たよ)って選択肢どうしの読み比べだけで判断しようとする受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。「見せかけの説得力」によって判断を誤(あやま)らぬよう、「事柄どうしの関連性」についてよく吟味(ぎんみ)し、判断しよう。
(72)飛躍(ひやく)偽装(ぎそう)(これ正解かよ!)
・例えば、「日本人はあいまいな返事を好む」や、「日本人は自らの意思をごまかそうとする」のような、一見誇張(こちょう)、もしくは歪曲(わいきょく)された印象を与える表現や、論理的にも飛躍した印象を与える表現で説明されていても、筆者(作者・登場人物)の個性や考えに沿(そ)えば、それが不適切とは言い切れない場合がある。このように、表現や言い回しを巧妙(こうみょう)に調整し、「正しい内容でありながら、不適切な印象を与える説明」、「論理的に飛躍した印象を与える説明」に偽装することで、解答者の誤認を図(はか)る。同時に、一般に多くの小学生(受験生)が消去するよう指導されている、「『言い過ぎ』の印象や『大げさ』な印象を与える表現」、あるいは、「極端な表現」等の誘導要素を敢(あ)えて含めてある場合も少なくないので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。
(73)意味不明(イミフ/ちょっと何言ってるか分からない/ナゾ/支離滅裂(しりめつれつ)/曖昧(あいまい))
・何が言いたいのか、さっぱり意味がわからない。論理展開がデタラメだったり、意味内容が曖昧(あいまい)で捉(とら)えにくかったりする。ただし、正解でありながら言い換(か)え等により正解と思えなくする(2)「カモフラージュ」や、(42)「暗黙の前提」等の手法が用いられた「正答肢である可能性」も排除してはならない。(1)「論外」の一種。
【 友紀夫君と進次郎君 ~疑似(ぎじ)相関(見せかけの相関)】 ※関連手法(11)参照
・友紀夫(ゆきお)君:アイスクリームの販売量が、上がっていますな!(A)
・進次郎君:熱中症になる人も、増えているぞ!(B)
・友紀夫君:アイスクリームの販売量の増加が、熱中症増加の原因ですな!!!
・進次郎君:今のままではいけない! だからこそ、日本は今のままではいけない!
・ひろゆき君:それって、あなたの感想ですよね!
・竜兵君:くるりんぱ!
・たけし君:ちょっと何言ってるかわからない。
・ある事柄(ことがら)(A)が変化するとともに他のある事柄(B)も同時に変化しているとき、そこに「相関関係がある」というが、単に相関関係を示しているだけのものに「因果関係」を捉(とら)えてしまうことを「疑似相関(ぎじそうかん=見せかけの相関)」という。
※相関関係:一方の変化とともに、他方も変化するような関係。
・例文の場合、実際には(A)と(B)は「別の要因(C=気温の上昇)」によって変化しているのだが、それがはっきりと見えるものではないために、(A)と(B)とが「因果」によって関連づいている印象を与えてしまう。「因果関係のあるものには相関関係がある」が、相関関係があるからといって、それが因果関係を示しているとは限らない。
【 循環(じゅんかん)論法 】 ※(65)『同語反復』、『循環論法』参照
・友紀夫(ゆきお)君と進次郎君とは特殊(とくしゅ)な通信方法を使って互いに自由に意思疎通(そつう)できるようですが、二人の会話は論理が破綻(はたん)していて、一般の人たちには全く意味不明ですね。竜兵君もたけし君も呆(あき)れてしまいました。ちなみに進次郎君の、「今のままではいけない! だからこそ、日本は今のままではいけない!」のような論法を「循環論法」といいます。同語を無意味に繰り返して、いかにも根拠に基づいた主張らしく見せかけるだけの偽(いつわ)りの論法ですから、話の中身が空っぽで、何の問題解決にもなりません。
※(65)、(66)『同語反復(循環論法)』を参照!
・そこで、ひろゆき君は、堂々と「空(から)っぽの主張」をして誇(ほこ)らしげな進次郎君に対し、「問題に対して真摯(しんし)に向き合いもせず、平然と論点をはぐらかし、明確な根拠も具体案も示さず、虚勢(きょせい)を張っては自己満足に浸(ひた)っているばかりで、ただ当たり障(さわ)りのないその場限りの感想を述べて能天気に受け流して済まそうとする言動は、実にいい加減、かつ無責任であり、人を馬鹿にしている」と非難しているのです。
※破綻(はたん):物事が修復不可能な状態にまで壊(こわ)れること。
※虚勢(きょせい)を張る:実際よりも優(すぐ)れたものに見せかける。空(から)いばりする。
※真摯(しんし):真面目(まじめ)に、ひたむきに物事に取り組むさま。
※能天気(のうてんき):何事も深く考えず、常に呑気(のんき)で気楽なさま。また、その人。
【屁理屈(へりくつ)】 ※(65)『屁理屈』参照
・警官:この牛泥棒(どろぼう)め、逮捕(たいほ)する!
・犯人:だ、だんな! 誤解ですぜ! あっしはたまたま綱(つな)を拾っただけで、そしたら牛が繋(つな)がっていましてね、牛のやつが勝手について来ただけですってば!
⑤ すり替え一般
(74)主語のすり替え(えっ、マジか!)
・選択肢の説明における主語(主部)が別のものにすり替わっている。普段、「主語と述語の係り受け」をほとんど意識せずに文章を読んだり、書いたり、あるいは話したりしている受験生が相当に存在することを作問者は心得ている。また、「正しい要素」が複数含まれた説明であるからといって、必ずしもそれが本文の内容と一致しているとは限らない。「主語と述語の係(かか)り受け」を意識し、「論点=中心となる問題点」や「文脈=語句どうし、あるいは文どうしなどの論理的な繋(つな)がり」を正しく踏(ふ)まえながら「読み、書き、話す習慣」を持とう。
(75)心情違い(気持ちが違う)
・人物の心情に合致(がっち)しない心情表現にすり替えてある。「不思議に思っている」、「予想外に思っている」、「驚(おどろ)いている」、「願っている」、「興味を引かれている」等の表現によって人物の「共感度や受け止め具合」を低めたり、ぼかしたり、あるいは逆に、「絶望している」、「決意している」等の表現によって「共感度や受け止め具合」を高めたりして巧妙に調整してある。
(76)理由違い(理由のすり替え)
・説明における『理由(根拠)』が、本文における本来の「理由(根拠)」とは異なったものにすり替えてある。この『理由を示す部分』の説明は、本文中からの引用である場合や、変造や捏造(ねつぞう)による場合もある。また、「~から(ので・ため)」のような表現を用いるとそこが『理由を示す部分』であることに気づかれやすいため、「~ことで(によって)/~わけで/~せいで(おかげで)」のように言い換えられることが多い。
(77)きっかけ違い
・本文中に書かれた「きっかけ」とは異なった不正確な「きっかけ」にすり替えて説明してある。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、「不確かな記憶や思いこみによって判断」したり、本文との照合なく「選択肢の読み比べだけで判断」したりせぬよう注意しよう。
(78)いきさつ違い(経緯違い)
・本文中に描かれた「経緯(成り行き)」とは異なった不正確な「経緯」にすり替えて説明してある。
(79)目的違(ちが)い(目的のすり替え)
・説明における『目的』が、本文における本来の「目的」とは異なったものにすり替えてある。この『目的を示す部分』の説明は、本文中からの引用である場合や、変造や捏造(ねつぞう)による場合もある。また、「~ために」のような表現を用いるとそこが『目的を示す部分』であることに気づかれやすいため、「~に向けて」、「~をしに」、「~となるように」のように言い換えられることが多い。
(80)対象違(ちが)い(対象のすり替え)
・ある事柄(ことがら)についての「対象」が、別の事柄や人物にすり替わっている。記憶に頼(たよ)って判断しようとせず、本文との照合作業によって、「何に対して」、あるいは「誰に対して」なのか、対象となるその内容を正確に捉(とら)えるようにしよう。
(81)あらすじトラップ
・本文における「ある部分の粗筋(あらすじ)や要約文が書かれてあるだけ」で、実は設問の要求には何も応えていない。粗筋や要約文としては正しい内容であっても、「設問の要求」を正しく捉(とら)えずに「選択肢の読み比べだけで判断」したり、「不確かな記憶や思いこみによって判断」したりせぬよう注意。
(82)語のすり替え(語意のすり替え)
・日常においては、例えば「共感」、「同情」、「理解」は感覚的に似た意味の語として捉(とら)えられることがあるが、そのような一般的傾向を利用し、本文の内容に合致(がっち)しない意味の語にすり替えてある。
※共感:他人(相手)が抱(いだ)いている考えや感情について、自分もその通りだと感じること。
※同情:他人(相手)の苦悩や不幸を気の毒に思い、自分のことのように思いやっていたわること。
※理解:他人(相手)の考えや感情、立場などについてよくわかること。
※他に、「反省⇔後悔」、「中立⇔無関心」、「否定⇔反対」、「不満⇔不信」、「嫌(いや)だ⇔嫌(きら)いだ」、「申し訳なさ⇔罪悪感/後ろめたさ」、「残念だ⇔気の毒だ」、「避(さ)ける⇔無視する」、「真面目⇔素直/正直」、「中途半端⇔いい加減」、「意外だ⇔不思議だ」、「受け止める⇔受け入れる」、「目立たない⇔地味だ」、「疑う⇔信じられない」、「希望を持てない⇔絶望」、「信頼が揺(ゆ)らぐ⇔信頼を損(そこ)ねる」、「認識(知ること)⇔理解(分かること)」、「利用⇔応用」、「負(お)い目⇔引け目」などはそれぞれ同義ではない。
■日常においては、それぞれの語を意味や用法を厳密に区別せず感覚的に用(もち)いて済ませてしまうことがある。国語学習においては、言葉の辞書的な意味や用法を適宜(てきぎ)国語辞典を用いて確認するなど、言葉に関わる取り組みや言語生活への姿勢をより強く意識することが大切だ。
■国語辞典を使用して言葉の意味を調べる際には、意味が分からない言葉があったら何も考えずに即座(そくざ)に辞書を引くのではなく、まずは文脈や言い回し、その言葉に含まれている漢字等を手掛かりに、知識や語感、また、それまでの生活体験等にも照らし、自分なりに意味を推定し、そのうえで本来の正しい意味や用法を確認するという手順を踏(ふ)むほうがよい。そして、何より、その言葉を単に知識事項や暗記項目の一つとして済ますのではなく、今後自分が生きていくうえで使いこなしていく言葉の一つとして、あるいは、これからの「自分」というものを作り上げてくれる大切な素養(そよう)の一つとして捉(とら)え、積極的に自分の中に取り込み、生活の中で活用していく姿勢で学ぶことが大切だ。
(83)換言(かんげん)トラップ
・選択肢の説明において本文中のある内容や表現が言い換(か)えられている場合に、本来の意味内容を変えてあったり、微妙にずらしてあったりする。「抽象化」や「一般化」により「言い換え」がなされている場合、それが本文の意味内容と合致(がっち)する適切な表現であるかどうかをよく検討しよう。
(84)ぼかし語トラップ(概念(がいねん)語によるはぐらかし)
・「不思議な出来事」、「奇跡的な経験」、「未知の世界」、「正反対の考え」、「本質的な価値」、「本物の関係」、「実質的な効果」、「次元の異なる発想」のように、本文中のある内容が「概念語(抽象語)」によって言い換(か)えられている場合に、その「概念語」が本文の内容に即(そく)した適切な意味や用法としてではなく、単に「意味のぼかし/説明のはぐらかし」として利用されている。「概念語」を感覚的に「何となくそんな意味」で捉(とら)えていると、印象操作による誘導にかかる恐れがある。
※概念(がいねん):物事の本質や性質について、抽象的、普遍(ふへん)的に捉えた意味内容。
■概念(がいねん)語
・物事の本質や性質について、その内容を抽象化して表す語。
・例:友情・信頼・共感・理解・同情・喜び・悲しみ・安心・不安・好意・愛情・決意・親切・希望・失望・絶望・疑問・正義・対比・比較・対立・矛盾・客観・主観・絶対・相対・文化・習慣・自然・個人・社会・人生・教育・情報・技術・現在・過去・未来・時間・空間・理想・現実・直接・間接・平和・自由・思考・認識・判断・論理・価値・評価・可能性・表面的・合理的・多様性・因果関係、民主主義、情報社会、など。
(85)迂言(うげん)法
・例えば、「親友」のような「直接表現」を用いるのではなく、「①仲がよく+②信頼し合える友達」のように「複数の語を組み合わせて同意となるよう言い換(か)えて正答肢に用い、逆に誤答肢のほうに「直接表現」を用いて目立たせ、誘導を図る。「言い換え」に気づいたら、それが文脈上正しい内容の適切な表現であるかどうかをよく確かめよう。(2)「カモフラージュ」の一種。
※他の例:幸福(=恵まれた状態に満ち足りた心持ち)、勇気(=恐れずに立ち向かおうとする思い)
※迂言(うげん)法:あることを、単一の語句で直接言い表さず、複数の語句を用いて同意となるよう間接的に表現する方法。
(86)一般論(普通はそうだろ/一般論はさておき)
・本文の内容に沿(そ)わない、無関係な一般論が書かれてある。説明内容自体は「一般論として正しい」ために否定できないので、本文の内容をよく把握(はあく)をせずにいると誘導に陥(おちい)る恐れがある。(3)「ホイホイトラップ」、(41)「前提のすり替え」の一種。
※一般論:世間一般に広く認められると考えられる論。個々の具体的な事柄(ことがら)を考えず、広く全体を論じる議論。「自然保護は大切だ」、「適度な運動は健康によい」、「勉強すれば将来の役に立つ」など。
(87)常識・道徳論(文句言うな・逆(さか)らうな)
・「常識」や「道徳」としての説明となっている。常識として、あるいは道徳的に正しい事柄(ことがら)に対しては否定しづらく、逆にそれにふさわしくない事柄に対しては肯定(こうてい)しづらい一般心理を作為(さくい)的に利用する。「常識的、道徳的にはそのとおりだが、本文の内容とは合致(がっち)しない」と見抜けるようになろう。(3)「ホイホイトラップ」の一種。
※常識:健全な一般の社会人が共通に認めている、普通の知識や思慮分別(しりょふんべつ)。社会通念。
※道徳:社会生活を送るうえで、個人が守るべき規範(きはん)。人が踏(ふ)み行うべき正しい道。尚(なお)、倫理(りんり)と道徳とは同義であり、根本的な相違はないが、現代の日本では、道徳の場合、「『徳』という意味合いを強く含意(がんい)し、自発的に正しい行為へと促(うなが)す個人の内面的原理として働く」というニュアンスを含む。
(88)比喩(ひゆ)説明不適 ※実在トラップ
・本文中の指定部分における比喩表現についての解釈が本文の内容に即(そく)しておらず、「単にその比喩表現が与える一般的なイメージの説明」、「主観的な印象の説明」、「単に辞書的な意味の説明」となっている。また、「単に別の比喩への言い換え」をして誘導を図る場合もあるので注意。
■『実在トラップ』
・例えば、「闇(やみ)」という語が本文では「真実を秘(ひ)めるもの」のように象徴的な意味合いを与えられているとして、それが選択肢においては「暗くて見えない部分」のように表現をぼかしながら、単に「実在・物理的存在」として、あるいは、単に「辞書的な意味」にすり替えて説明されている。
(89)暗示・象徴(しょうちょう)トラップ
・単なる光景等の描写(びょうしゃ)について、無理やり主題や心情を投影(とうえい)させた「暗示」、もしくは「象徴的な意味」を与えた説明となっている。「暗示」や「象徴」を捉(とら)える視点は必須(ひっす)であるが、単なる光景や事物(じぶつ)の描写にまで無理やり意味付けをしてしまわぬよう注意。
※暗示:その後に起こる「事件」や「展開」を情景描写や種々(しゅじゅ)の事象(じしょう)によって予(あらかじ)め読者にそれとなくほのめかしておく手法。伏線(ふくせん)。
※象徴:本文の内容において、一見さほど重要でなく思われる部分的な描写であるが、実はその作品の「主題」や「人物の心情」等と深く関連づく、作品上重要な意味や役割を与えられたものごと。
(90)可能性トラップ
・ある事柄について、本文では「▲の可能性が『ある』」と述べられているのに対し、選択肢の説明においては「▲の可能性が『高い』」といった内容にすり替えてある。「可能性の有無」と「可能性の程度(高さ・低さ)」とは別問題である。(41)「前提のすり替え」、(14)「論点違い」の一種。
(91)主題違い(要旨(ようし)違い/主題トラップ)
・「主題(要旨)を捉(とら)える問題」において、「本文全体に底流する『本来の主題や要旨(ようし)』とは無関係な説明」となっている。また、「主題(要旨)の意味内容を微妙にずらしてある」場合や、「主題(要旨)そのものではなく、それに深く関連する副次的な事柄(ことがら)についての説明」にすり替えられている場合もある。(41)「前提のすり替え」、(42)「暗黙の前提」の一種。
※副次(ふくじ)的:主要なものに対して、従属した関係にあるさま。二次的。
(92)趣旨(しゅし)違い(脱線(だっせん)/意味違い/意味ズレ)
・「仲直りして、握手(あくしゅ)した(事柄の前後関係を示す文脈)」と、「握手して、仲直りした(並行(へいこう)的状況を示す文脈)」とでは意味が異なるように、説明の趣旨や文脈が正確でなかったり、異なっていたりする。
※文脈:「文章中の文と文」や、「文中の語と語」の論理的なつながり具合。
(93)非主要(後回しでよくね?)
・「設問における論点」とは異なる、「主要(中心)とは言えない論点」について説明されている。「設問における論点」から外(はず)れ切っているわけではなく、あるいは、『主要な論点に深く関連する内容』であることが多いため、判断に迷う恐れがある。(14)「論点違い」の一種。
※本旨(ほんし):本来の趣旨(しゅし)。趣旨とは、言おうとしている中心的な内容のこと。
(94)主観(どっかの誰かさんの考え)
・本文の内容に沿(そ)った客観的な内容とは異なる、無関係な主観的内容の説明であったり、主観的な「偽(にせ)要素」が組み込まれていたりする。客観的な視点や客観的な把握(はあく)力が未発達な小学生を誘導しやすい。相対的視点をもって「自分の見方」と「他者の見方」とを区別し、「この説明は不特定他者の主観であって、筆者(作者・登場人物)自身の考えとは無関係である」と見抜けるようになろう。(3)「ホイホイトラップ」の一種。
(95)それってあなたの感想ですよね!
・本文における「ある箇(か)所の意味内容を問う問題」等において、「本文の内容を踏(ふ)まえた適切な解釈」ではなく、「単にその表現や内容から抱(いだ)きそうな主観的な感想や印象を述べ連(つら)ねてあるだけ」となっている。(14)「論点違い」の一種。
(96)成り済まし(偽装(ぎそう)理由)
・「なぜですか」という「理由説明を求める問題」でありながら、「問われている箇所(かしょ)の意味内容を説明してあるだけ」となっており、実は設問の要求である「理由」については何も説明されていない。設問の要求をよく確認もせずに取り掛(か)かると、「それはどういうことですか」といった「内容説明を求める問題」と勘違(かんちが)いしてしまいやすい。また、「問われている箇所の表現を別表現に書き改めてあるだけ」の場合もあるので注意。(3)「ホイホイトラップ」の一種。
(97)別の事柄(ことがら)の説明(別件の説明/不正流用)
・設問の要求する事柄についての正当な説明そのものではなく、本文中の無関係な別件(別の事柄)についての説明にすり替わっている。「確か本文にはそのように書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断してしまわないよう注意。また、「本文を照合せず、記憶に頼って選択肢の読み比べだけで判断」するのも危険だ。(14)「論点違い」の一種。
※流用:本来の使途(しと)を外れて別の使途に用いること。
(98)余計(よけい)(邪魔(じゃま)/異物混入/蛇足(だそく)/お邪魔虫)
・説明を成立させるための要素は全て揃(そろ)っているが、実は密(ひそ)かに「偽(にせ)要素」も組み込まれている。
(99)替え玉(かえだま)(身代(みが)わり)
・「『筆者、あるいは登場人物は』どう考えているか」のように問われているにもかかわらず、その当人ではなく、本文に引用されている、もしくは本文に登場する別の人物の考えや気持ちを、筆者自身のものとしてすり替えて説明されている。「確か本文にはそのとおり書いてあったはずだから」と、不確かな記憶や思いこみによって判断しないよう注意。また、「本文を照合せずに選択肢の読み比べだけで判断」するのも危険だ。
(100)偽証(ぎしょう)トラップ
・「登場人物が本心を隠して述べる気持ちや考え」、あるいは、「筆者自身が想定する他者の反論」等を引用し、それが「登場人物(筆者・作者)本人の本心や考え」であるかのようにすり替えて説明してある。
(101)回想部の変造(思い出作ってみた!/思い出作り)
・本文における「回想部」を説明に引用する際、さり気なく回想部の時系列や内容等を改変してある。読解作業においては、回想部の内容や展開、時系列も正確に掴(つか)むことを忘れずに。
※回想部:過去を振り返って、あれこれと思い出す部分や場面。
(102)定義のすり替え(定義ちがくね?)
・筆者、あるいは作者によって「特に定義づけられた概念(がいねん)や語句」を、それとは異なる意味合いにすり替えて説明してある。
※違くて/違く:俗語(ぞくご)。正しくは「違って/違い」とする。また、「違かった」、「違くない」も、それぞれ「違った」、「違わない」と正すこと。
(103)語句矮小(わいしょう)化(なんか意味弱まった…)
・「いじめ」を「不仲(ふなか)」と表現するように、本来説明にふさわしい的確な語句や表現を用いるのではなく、「本質を外した、意味を弱めた表現」にすり替えて説明してある。(14)「論点違い」の一種。
※矮小化(わいしょうか):物事や、物事の重要性を小さく見せること。
(104)論点矮小(わいしょう)化(大した問題かよ!)
・「いじめというのは、子どもの悪ふざけの一形態である」のように、ある問題(論点)について、それをわざと小さく取り上げたり、重要性を低めたりして説明する。論点についての方向性が一致していても、問題の本質が不明確であり、説明として不完全である。(14)「論点違い」の一種。
※矮小化(わいしょうか):問題を小さく見せること。物事の重要性を小さくしたり、物事の一部だけを断片的に捉(とら)えて問題を小さくしたり、小さく見せたりすること。日常においては、ある問題について、それが「大した問題ではない」といったニュアンスで言い逃れや責任回避(かいひ)をする際などに用いられる場合が多い。
(105)反対語トラップ
・「満足」を、反対語である「不満」を使って「不満ではない」と言い換(か)えても、同義とはならない。このように、本文におけるある語句の「対義語」を用いて「反対表現にする」ことで、いかにも正しい説明であるかのように偽装(ぎそう)する。(31)「論理的飛躍」の一種。
(106)単純例示
・本文中に挙げられている具体例、またはその一部がそのまま選択肢の説明に組み込まれているだけで、説明として成立していない。
(107)半分ずっこ(ハーフ&ハーフ)
・選択肢の説明が内容的に大きく二つに分けられるような場合に、前半か後半のいずれかは完全に正しい内容であるが、一方が完全に間違っているか、あるいは、意味があやふやである。「本文中のキーワード」や(5)「キラキラワード」などを巧(たく)みに組み込み、直感の誘発(ゆうはつ)や印象操作によって誤答への誘導を図(はか)る。検討が不十分だと、あやふやな記憶に頼(たよ)って判断してしまったり、「ハロー効果」による直感頼りの判断に落とし込まれたりするので注意。
※半分ずっこ:半分ずつにする、の意。
※ハロー効果:ある対象を評価するとき、その「一部の特徴的な印象」に引きずられて、全体について歪(ゆが)んだ評価をしてしまう心理現象。「halo(ハロー)」とは聖像などの頭部や全身を包みこむ後光(ごこう)や光輪(こうりん)。また、太陽や月の周囲を取り巻く「かさ」のこと。後光効果。
(108)要素倒置(要素不足誤認)
・線部等、問われている箇所(かしょ)の内容が、例えば「A→B→C」の要素に分解できるとして、それを選択肢の説明では「C→A→B」のように要素の順序を変えて文脈構成し、一見したところでは「要素不足」であるかのように誤認させる。また、逆に順序そのものは「A→B→C」と一致させてあっても、表現を調整することで「要素不足」であると誤認させる場合もあるので注意。(2)「カモフラージュ」の一種。
(109)具体例照合(落ち着いて慌(あわ)てろっ 💛◝(⁰▿⁰)◜💛)
・「本文中の具体例は重要ではないので読み飛ばせ」と指導されている受験生が相当に存在することを作問者は心得ており、そこで、具体例をあらためて照合しないと選択肢の検討に進めないようにしてある。
(110)否定(ひてい)不能(消極的肯定(こうてい)/出直して来いや)
・最後の二択での「絞(しぼ)り込み」において、「積極的に肯定(こうてい)されうる選択肢」と「消極的に肯定されうる選択肢」とがあり、その判別が非常に困難となっている。いずれの選択肢も内容的には決して否定できず、際(きわ)どい見極めが必要となる。設問の要求はもとより、思考の方向性、文脈、視点、論点、諸要素の有無や正否(せいひ)、因果関係、前提の正否、暗黙の前提、論理的飛躍、踏み込みの度合い、換言の適否(てきひ)、表現やニュアンス等、さまざまな角度からの検討力が求められる。
(111)正答もどき(ゴースト/パラレルワールド/トワイライトゾーン/蜃気楼(しんきろう)/攪乱(こうらん/かくらん))
・「正答肢」の要素・文脈・表現等に非常によく似せ、真偽(しんぎ)の判断を困難にする。本文との照合において、問われている箇所とその前後近辺の情報を単眼的に確認しただけでは「正しい内容や要素」を読み取ることができない場合があるため、本文における前提内容、論理構造、文脈、表現、ニュアンス等を含め、厳密かつ総合的に判断する必要がある。
※ゴースト:多重像。幽霊(ゆうれい)。亡霊(ぼうれい)。
※パラレルワールド:並行(へいこう)世界。現実の世界と並行して存在するとされる別の時空世界。
※トワイライトゾーン:昼でも夜でもない曖昧(あいまい)な時間帯である夕暮れ時。二者間の境界が曖昧な領域。時空の歪(ゆが)みに陥(おちい)ったり、超能力や心霊現象などの超常現象を経験したり、あるいは、宇宙人、タイムトラベラー、透明人間、地底人などの異世界の存在と遭遇(そうぐう)したりといった怪異(かいい)が起こるとされる時間帯。アメリカで制作されたSFテレビドラマのタイトルが語源。
※蜃気楼(しんきろう):光の異常屈折(くっせつ)によって地上の物体が浮き上がって見えたり、逆さまに見えたりする現象。海上や砂漠で起こる。ミラージュ。
※攪乱(こうらん/かくらん):混乱が起きるようにすること。かき乱すこと。

⑥ 関連手法(12種)
(1)わら人形論法(ダミー攻撃/歪曲(わいきょく)攻撃)
・本文におけるある言説(げんせつ)をわざと歪(ゆが)めて解釈し、そのうえで、その「ダミーの論点」について批判的に説明してある。(14)「論点違い」、(31)「論理的飛躍」、(41)「前提のすり替え」の一種。
※歪曲(わいきょく):事実をわざと歪(ゆが)めて(曲げて)伝えること。「曲解(きょっかい)」は、事実を曲げて受け取ること。
※わら人形論法:相手がそもそも言ってもいない論点を作り上げ、その「架空の論点(わら人形/ダミー)」に対して反論し、自説を有利に導く詭弁(きべん)。案山子(かかし)論法。架空(かくう)の論証。
《例》
・先生:勉強は大事なんだから、毎日しっかりと勉強するんだぞ!
(前提:励(はげ)まし)
・生徒:「泣こうがわめこうが、引きずり回してでもお前を勉強漬(づ)けにしてやるわ、このボケッ!」だなんて、そんなひどいことを生徒に向かって平然と言う教師がどこにありますか!
(話をねじ曲げて「スパルタ教育」に論点(前提)をすり替えて非難し、ついでに人格攻撃)
・先生:誰がそんなこと言ったかね、このスッタコが!
・生徒:……てへぺろっ (・ω<)!
(2)道徳主義トラップ(道徳をダシにせよ!)
・「カンニングは悪いに決まっているじゃないか(道徳的価値観)。だから、僕がカンニングなんてするはずない(事実にすり替え)」のように、「Aは道徳的に善である(悪である)、だから、Aは▲が事実だ」という形式で、「道徳的な価値観を事実にすり替える」論法。「道徳」をはじめから「良いもの・正しいもの」と前提し、そのうえで、「だから、▲が事実だ」と、誤った結論を導く。(3)「自然主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。
(3)自然主義トラップ(自然に倣(なら)え!)
・「人間は本来、夜には眠る動物だ(自然界の事実)。だから、人間は深夜に勉強をすべきではない(価値判断にすり替え)。」のように、「Aは自然界の事実である。だから、Aは▲であるべきだ(価値判断)」という形式で、「自然界の事実を価値判断にすり替える」論法。「自然界の事実」をはじめから「良いもの・正しいもの」と前提し、「だから、自然に逆らわない行動が正しい」と、誤った結論(価値判断)を導く。(2)「道徳主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。
(4)新規主義トラップ(新しければいいの?)
・「この教材は改訂(かいてい)された(新しいものごと)。だから、内容も優(すぐ)れている(価値判断)」、「ざんぎり頭を叩(たた)いてみれば、文明開化の音がする」のように「『新しいものごと』は無条件に『良いもの・正しいもの』」であると前提し、「過去のものごと」を否定する。新しいものごとが常に正しいとは限らない。(5)「伝統主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。
(5)伝統主義トラップ(古ければいいワケ?)
・「以前は誰もがテレビや新聞、ラジオなどから情報を得ていた(習慣)、だから、インターネットの利用はふさわしくない(価値判断)」。「人類は数千年にわたり神を信じ続けてきた(伝統/慣習)。だから、神は存在する(事実)」のように、「『伝統や習慣・慣習』は無条件に『良いもの・正しいもの』である」と前提し、「現在のものごと」を否定する。昔のやり方が常に正しいとは限らず、また、昔のやり方が正しかったとしても、現在に通用するとは限らない。(4)「新規主義トラップ」の逆パターン。(41)「前提のすり替え」、(31)「論理的飛躍」の一種。
(6)論点まき散らし(めまいがするぜ/論点混在/動くゴールポスト)
・説明内に複数の異なる「論点」が組み込んである。それぞれの論点自体は重要なことかもしれないが、「何を中心の論点としているのか」が不明確で、焦点がぼやけてしまっている。(14)「論点のすり替え」の一種。
※動くゴールポスト:本来の主要な論点や条件を、その時々の状況により、こじつけによって新たな論点や条件を次々と追加、変更し、それを本来の主要な論点としてすり替え、自説に有利に働くよう導く手法。
(7)事実の主張へのすり替え
・本文では「花子さんは女性だ」と書かれているものが、選択肢の説明では「花子さんは女性らしくあるべきだ」のように、「事実」を「主張」にすり替えて説明されている。(14)「論点違い」の一種。
(8)前後即(そく)因果(祈(いの)ったから合格した!)
・「入試前日に必死に合格を祈(いの)ったら、本当に合格した。だから、合格したのは祈ったからに違いない。」のように、「『ある事柄(前件A)』が起きた後に、続いて『別のある事柄(後件B)』 が起きた」という連続的な事実を捉(とら)えて、「《前件A》が《後件B》の原因(理由)である」と無理やり因果づけて説明する。(31)「論理的飛躍」の一種。(64)「偽装因果」の一種。
(9)逆は必ずしも真ならず(逆(さか)立ち飛躍(ひやく))
・「海には、魚がたくさんいる(Aならば、Bだ)」を逆立ちさせて、「魚がたくさんいるのなら、そこは海だ(Bならば、Aだ)」と言い換えても、同義とはならない。これを、「逆は必ずしも真ならず」という。(31)「論理的飛躍」の一種。
(10)裏返しは必ずしも真ならず(AでないならBでない? /裏返し飛躍)
・「自分がされて嫌(いや)ことは、人にすべきでない(Aならば、Bである)」を裏返して、「自分がされて嫌でなければ、人にしても良い(Aでなければ、Bでない)」と言い換えても、同義とはならない。このように、本文における「ある表現を裏返して利用」することで、いかにも正しい説明であるかのように偽装(ぎそう)する。(31)「論理的飛躍」の一種。
(11)疑似(ぎじ)相関(見せかけの相関)
・ある事柄(ことがら)(A)が変化するとともに別のある事柄(B)も同時に変化しているような場合に、本来は両者に因果関係はないのに、あたかもそこに因果関係があるように見えてしまう現象を「疑似相関(見せかけの相関)」という。選択肢においては、「疑似相関」を利用した偽(いつわ)りの説明はないかどうかに注意しよう。(31)「論理的飛躍」、(64)「偽装因果」の一種。
■疑似相関の例
「(A)コンビニの店舗(てんぽ)数が増えた」、「(B)犯罪件数が増えた」という二つの事柄が同時に起きていたとして、そこに相関関係はあっても、「コンビニが増加したから、犯罪件数が増えた」ということにはならない。実際には(A)と(B)は「別の要因(C)=人口の増加」によって変化(増加)しているのだが、それがはっきりと目に見えるものではないために両者が「因果関係」によるものと見えたり、推測してしまったりする。
※相関関係:一方の値と別の一方の値とに関連性があること。
※因果関係:原因と結果との関係。因果関係のあるものには相関関係があるが、相関関係があるからといって、それがそのまま因果関係を示しているとは限らない。
(12)比較(ひかく)不成立(比べるなよ!)
・「このリンゴと、このミカンとでは、どちらが品質が良いか」、「ロックとクラシックとでは、どちらが優(すぐ)れているか」のように、そもそも本質や分類が異なるために比較することができない物事どうしを無理やり比較し、その「価値や良否」について述べる。(14)「論点違い」、(41)「前提のすり替え」の一種。

【 心理操作術 💛 】
■難易(なんい)にかかわらず、文章の文字を見た瞬間(しゅんかん)に気絶してしまう受験生は少なくない。集団指導などにおいても、国語の授業中に目を開けたまま気絶している者、瞑想(めいそう)修行中の者、目下(もっか)幽体離脱中の者の姿もしばしば見受けられることだろう。中学受験を人生のステップとして自ら選択した以上、自分一人の力ではどうにもならないなどと諦(あきら)めてしまわず、時に信頼できる先生や大人たちの力も借りながら、まずは自分にできることから始めよう。「未来の自分」の姿をはっきりと思い描(えが)き、それに強く、強く自分を引き付け、高めていく努力を日々積み重ねていってほしい。「自分の力で自分を育てる」姿勢、「自分の力で自分を作り上げてゆく」姿勢の大切さを忘れないこと。
(1)確証バイアス
・自分が信じている考えや判断を裏付ける情報にばかり注目し、逆に不都合な情報については無視する心理向。バイアスとは、偏見(へんけん:かたよった見方・考え方)のこと。選択問題においては、「論理的飛躍」や「前操作」といった手法に利用される。思考に方向性を定めること自体は大事であるが、都合の良い情報にばかりを向けて判断を誤(あやま)らせてしまうことのないよう注意しよう。
(2)初頭効果
・選択肢の説明において、後半部に誤(あやま)った内容を述べながら、前半部に正しい内容を述べることで目立たせ正解としての印象を強く与えて誤答に誘導する。「人間は最初に与えられた情報ほど信じやすい傾向をもつ」いう、心理学でいう「初頭効果」を作為(さくい)的に利用する。時間節約のため、選択肢の説明を最後まできちん読まず、専(もっぱ)ら前半部に書かれた内容によって正否(せいひ)を判断する傾向の強い解答者を誤答に誘導やすい。
※初頭効果:最初に提示された特性が印象に残り、その後の評価に影響を及(およ)ぼす心理的作用。逆は「新近効(心理学用語としては、表記は「親近」ではなく「新近」が正しい)」。
(3)新近効果
・選択肢の説明において、前半部に誤(あやま)った内容を述べながら、後半部に正しい内容をべることで目立たせ、解としての印象を強く与えて誤答に誘導する。「人間は最後に与えられた情報ほど信じやすい傾向をもつ」とう、心理学でいう「新近効果」を作為(さくい)的に利用する。小手先テクニックとして、選択肢の「説明における後部に書かれた内容のみによって正否(せいひ)を判断する」よう指導されている解答者などを誤答に誘導しやすい。※新近効果:最後に与えられた情報や、直前に与えられた情報が特に印象に残り、その後の評価に影響を及す心理的作用。尚(なお)、心理学用語としては、表記は「親近」ではなく「新近」が正しい。逆は「初頭効果」。
(4)アンカリング効果(初期値提示誘導)
・例えば、「ピザ」という語を相手に10回繰(く)り返させた後、「肘(ひじ)」を指差して「これは何か」と問うと、相手がつ「ヒザ」と答えてしまう現象を経験することがある。あるいは、ある商品の値札に書かれてある「元の値段」が二線で消され、併(あわ)せて「割引価格」や「値下げ価格」が書かれてあると、それを見て「この商品は得だ」という象を抱(いだ)いてしまうこともある。このように、「最初に提示された情報」が「アンカー=基準(初期値)」となってその後の判断に影響が及ぶ心理現象を「アンカリング効果」という。論理的には「前提操作」の一種。
※アンカー:船の錨(いかり)のこと。最初に与えられた情報が「アンカー」となって心にとどまり、その後の思考や断がその「アンカー」に引っ張られてしまう心理現象を「アンカリング効果」という。
※『論理パズル』のページに『消えた1,000円の謎』という問題を掲載(けいさい)しています。「アンカリング効果による心理操作と「前提操作」を念頭に、是非問題解決に挑(いど)んでみてください。
(5)誤前提(ごぜんてい)暗示(二分法(にぶんほう)の罠(わな))
・「サイドメニューはポテトになさいますか、それとも、サラダになさいますか。」のように、「いずれか一方を必ず択する」ことを「前提」として二者択一(たくいつ)を提示して誘導する暗示手法(二分法の罠(わな))。もっともらし選択肢が与えられると、限定されたその選択肢の中から判断をしがちであるという人間の心理傾向を作為(さくい的に利用する。選択問題においては、説明文中に「否定できない二つの要素を選択的に並列」することで暗示かけ、誤答へと誘導する。論理的には「前提操作」の一種。
※日本のマスコミ(マスメディア)による世論調査やアンケート等においても、(4)「アンカリング効果」、(5)「誤提暗示」などの暗示手法や、(41)「前提のすり替え」、(45)「条件トラップ」などの「論理操作(前提操作)」によて質問項目の表現や文脈を巧妙(こうみょう)に調整し、回答者の心理と判断を意図的に一定の方向へ誘導しよう図るケースがしばしば見受けられる。
(6)イエス誘導(ゆうどう)法
・選択肢の説明文に、解答者が「YES(イエス=その通りだ)」と肯定(こうてい)せざるをえない語句や表現を複数仕込み「肯定の認知を連続させる」ことで誤答に誘導する。「同意の積み重ね」により自然と反論意識が弱まっていく間の心理傾向を作為(さくい)的に利用する。選択問題では、「本文中の語句が沢山含まれているから正解だ」「肯定要素が複数あるから正解だ」といった、頭を使わない安直な機械的判断をしないよう注意しよう。論理的は「前提操作」の一種。
(7)事後情報効果
・ある出来事を経験した後に、実際の出来事には含(ふく)まれていなかった情報を与えられると、その誤(あやま)った情報に沿(そ)うように記憶が変容する現象。自分の理解した内容が、選択肢の説明内に含まれているさまざまな情報によってその都度揺(ゆ)れたりぶれたりしないよう、本文の正確な内容把握訓練を徹底しよう。論理的には「前提操作」として利用される。
(8)催眠(さいみん)誘導(ゆうどう)(トランス誘導/幽体離脱(ゆうたいりだつ)誘導)
・哲学的な内容の文章や、抽象表現の多用された難解な文章、間接描写(びょうしゃ)が多く意味が捉(とら)えづらい作品、あるいは、筆者(作者)独自の世界観に基(もと)づく極(きわ)めて個性的な内容の文章などが素材文として扱(あつか)われると、本文の内容と選択肢の説明内容との煩雑(はんざつ)な照合が思考に混乱をもたらし、解答者が文面を見つめるうちにゆるやかに催眠状態に陥(おちい)って朦朧(もうろう)となってしまう。あるいは、トランス状態や幽体離脱に陥ると、浮遊感と快感を伴(ともな)いながら、幸せそうな笑顔を浮かべつつ「ホゲー」となってしまう危険性もある。平常より難解な文章に対しても全力で食らいつき、頭脳をフル回転させて問題解決に取り組む訓練を積んでおきたい。
※催眠(さいみん):眠気(ねむけ)を催(もよお)すこと。
※トランス:魂(たましい)が抜(ぬ)けて、うっとりとした状態。
※幽体離脱(ゆうたいりだつ):意識や霊魂(れいこん)が肉体から離(はな)れている状態。体外離脱。
※煩雑(はんざつ):込(こ)み入(い)って煩(わずら)わしいこと。
※朦朧(もうろう):意識がおぼろげで、はっきりしないさま。
(9)ゾンビ効果
・一度誤答であると確信を抱(いだ)いて消去したにもかかわらず、その後も、「もしかしたら本当は正解なのではないか」、「手招きする方へ行けば自分は楽になれるのではないか」といった観念に度々(たびたび)襲(おそ)われては、いよいよ増幅する恐れと不安の中で、やがてふいに正常な判断力を失い、気が付くとまんまと誤答へと引きずり込まれてしまっていたのかよ、このっ! という、それはそれは恐ろしい現象。
※ゾンビ:邪悪(じゃあく)な霊力(れいりょく)などによって、生きた姿を与えられた死体。蘇生(そせい)死体。
※取り憑(つ)く:霊などが乗り移る。
(10)サブリミナル効果(隠し誘導文)
・「こっちへおいでよ💛」、「正解はこれだよん💛」、「もうお前を離さないもんね 」のような、受験生の潜在(せんざい)意識に強く働きかける文言(もんごん)をいくつかの要素に分解したうえで、それを選択肢の表現の中に巧妙(こうみょう)に埋め込み、誤答へと暗示誘導する。咄嗟(とっさ)には認識不可能な潜在情報を説明内に密(ひそ)かに埋め込むことで受験生をまんまと誤答へと誘導する、それはそれは、マジで恐ろしい暗示手法。
※サブリミナル効果:映画やコマーシャル等において、例えば「コーラを飲もう」、「ポップコーンを食べよう」といったメッセージを表示した一コマをフィルムの中に何枚か挟(はさ)み込んで映写すると、数千分の1秒という、視覚では通常認識できない極めて短い時間に繰り返して表示されるそのメッセージが、コーラやポップコーンの売り上げ増加に反映するとされる現象。ある知覚刺激が非常に短時間であるなどの理由で意識としては認識できないが、潜在意識に対して一定の影響を及ぼすことができるとされる。心理学や認知科学の分野での実証が困難とされているが、心理操作や暗示誘導、洗脳、マインドコントロール等に悪用される恐れがあるため、日本ではNHKや民放がこの手法を使用しての放送を禁じ、海外でも同様に禁止している国が多い。
※洗脳:暴力的な手段など強制力により、相手の思想や主義を根本的に変えさせること。
※マインドコントロール:暴力的な手段などを用いずに相手の心理状態を制御(せいぎょ)し、特定の意思決定や行動へと誘導すること。

本編をお楽しみいただき、誠にありがとうございました。
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